真夜中の占い館で散歩
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ガンダム戦記 白のプラトーン (31)

9、冬の朝は思うより冷たくない



 明け方を迎え、辺りは少しずつ明るくなっていった。
 兵士たちが慌しく動き回る中、アカギは顔の上にタオルをかぶり椅子に腰掛けている。
 そんなアカギの様子にセレナは戸惑っていた。寝息がかすかに聞こえてくる。

 寝てるんだ……

 セレナは昨日から自分も一睡もしていなかったことに気がついた。起こさないように静かに横に座ろうとする。
 しかしうっかり瓦礫の一部を崩してしまい耳障りな音がでた。
「セレナか?」
「ごめん、起こしちゃった?」
「いや……どうせ熟睡なんてできやしないんだ。それより時間はまだ少しあるはずだろ? 俺の話を聞いてくれない
か。忘れてくれていいし上の空でもいい」
「え?」
「ただ、誰かに話したいんだ。いいかな」
「……うん」
「…・・・俺には弟と妹がいた」
「知ってるよ。部屋にあった本に写真、挟んであった」
「そう…」
「アカギ、素敵な笑顔だったね」
「あれは最低さ」
「そんな事ないよ」
 アカギは顔にタオルをかぶせたまま話し始めた。
「弟はサッカー選手に憧れて妹は獣医になるんだってよく言ってた。
ありきたりのささやかな夢さ。ある時、俺はあいつらと電話で話しをしてたんだ。 軍隊ってのは電話もままならないところでね、あれは久しぶりの電話だった。いつものようテレビがどうのってくだらない話をしてきやがる。まあ、それでも俺には十分楽しかったよ。
あの時は犬の話だった。弟が捨て犬を拾ってきてそいつを飼っていいか言うんだ。俺は遠く離れた場所にいるんだし家に帰るのもまだ先だ。大体、叔母さんの家に厄介になってるんだから頼む相手は、まずそっちじゃないか。それなのに一生懸命に二人で頼むんだぜ? 俺は可笑しくってわざと渋ってたんだ。すると、あいつら、さらに一生懸命になって言うんだよ。"お願い、フランキーを飼わして"って。可笑しいだろ? もう名前も決めちまってるんだぜ」
 アカギの声が笑っていた。その様子にセレナも軽く笑う。
「必死にせがむ二人がさ、ちょっとかわいそうになったんで焦らすのをやめて"じゃあ、叔母さんが許してくれるんだっ
たらいいよ"って言ったんだ。俺はてっきり二人が大喜びで受話器越しに大騒ぎするもんだと思ってた」
 アカギの言葉がそこで止まりしばらく無言になる。
「アカギ?」
「それっきり二人の声は聞こえなくなった」
 再び言葉は続けられた。
「そのうち電話は切れちまって、もう一度かけなおしても不通。俺は何度も試したよ。そのうち、周りが騒がしくなった。テレビの前にみんなが集まってた。何が起きたかと思ったら"ジオンがコロニーを地球に落下させた"っていうんだよ。最初は何かの冗談かと思ったよ。信じられるか? 州がひとつ落ちてきたのと同じなんだぜ? そのうち基地は大混乱。いろんな情報が交錯してちょっとしたパニックさ。でも、それもすぐに落ち着いてきて正しい話が伝わるようになってきた。事実を聞いて俺は……」
 またアカギが言葉に詰まる。
「俺は……まあ、いいさ。その……信じられない話を聞いたんだよ。コロニーの落下進路は最初、連邦の司令部のあるジャブローのはずだったんだ。それを連邦の宇宙艦隊が砲撃で進路を変えたんだ。チェックメイトされる寸前だったんだ。それはわかる。だが変えた進路ってのは、よりによって弟と妹のいる都市だったのさ。その時、間抜けな俺はようやく気付いたんだ。あれは電話の故障じゃない。通じないのは皆、電話ごと吹き飛んじまったからなんだって」
 アカギは顔を隠したままそのまま話続けた。
「コロニーを落としたジオンの連中が"クソ"だってのは間違いないけど軍事施設を守る為に民間人のいる場所に進路を変えちまう連邦もクソッタレだ。ジオンが独立したいってんならさせてやればいいじゃないか! 俺たちを、俺たちの家族を巻き込むなってんだよ!」
 アカギの口調が強くなった。感情的になったアカギにセレナは少し驚いていた。
「ってわけだ」
 話は終わった。口調もいつものアカギに戻っていた。
「軍隊ってのは身内の批判ってのはタブーなんだ。セレナだから話せた。聞いてくれてありがとな」
「……いいよ」
 セレナはアカギの手の上に自らの手をのせた。
「アカギ…あたし、ジオンに暮らしてたけど戦争も地球の事もまったく知らなかった。あの…ごめん」
「おまえが謝ることはないよ。"コロニー落とし"をしたのは、つまらん作戦を立てたジオン軍のトップ連中なんだから」
「でも……でも、ごめん! アカギ」
 アカギの手を握るセレナの手に力が込められていく。
 セレナの頭に上からタオルが被さった。
「ごめんな、お前に罪悪感持たせようって思ったわけじゃないんだ」
 タオルの下でセレナは泣いている。アカギは座っているセレナの正面に回って両肩に手を置いた。
「お前は俺が必ず守ってやる。ジオンのクソどもにも連邦の馬鹿どもにも渡さない」
 セレナは顔を上げた。
「だから泣くな。な?」
 そう言ってアカギはセレナに笑いかけた。アカギの初めて見せる笑顔だった。
「う…うん」
 頷いたセレナは涙を拭った。
 アカギの顔はいつの間にか元の冷めた表情に戻っていた。セレナは、それを少し残念と思う。
 アカギは立ち上がると腕時計を見た。
「もうすぐ時間だ」



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