真夜中の占い館で散歩
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ガンダム戦記 白のプラトーン (30)


「セレナ、よく聞いてくれ」
 セレナをジムのそばに連れてきたアカギは人のいないのを見計らうと切り出した。
「あと一時間後でジオンの連中が指定した時間だ」
 セレナは神妙な顔つきでアカギを見た。
「君を引き渡さなければあの"クソタレども"は俺たちを皆殺しにすると言ってる」
 その言葉にセレナはうつむく。
「……あたし…いいよ」
「えっ?」
 そう言ってセレナはにこりと笑った。
「アカギやウォーターやニックや……ジュノ…優しくしてくれた他の人たちが死んじゃうのはヤダもん」
「セレナ……」
 アカギは笑顔ながらも哀しそうなセレナの顔を見つめた。
「セレナ。俺を信じられるか?」
「アカギを? アカギは最初から信じてるよ。悪い人じゃない。とてもやさしいひと」
「やさしいひと……か」
 その言葉につい苦笑いをしてしまったアカギはセレナの肩に手を置いた。
「上手くいくかわからないがちょっとした"賭け"をしようと思う。それにはセレナの協力が必要なんだ」
「"賭け"?」
 不思議そうな顔でアカギを見つめるセレナは小首をかしげた。
「こいつで無茶をする」
 アカギは目の前にある白いモビルスーツを見上げた。


 *  *  *  *  *


 十数分後、兵士たちが集められた。
 ざわめく兵士たちの前にアカギが姿を現した。その後ろからセレナがぴったりと付いて来る。
「聞いてくれ、俺たちは絶対的危機を迎えてる」
 酷い夜を乗り切った兵士たちは疲れきっていた。皆、神妙な顔つきでアカギの言葉に聞き入った。
「この基地の特性上、退路はない」
 一部で、ため息が聞こえてきた。
「だが希望がないわけじゃない」
「ジオンの捕虜を渡すんですか!」
 誰かが言った。
 その言葉にセレナは動揺した。それに気がついたアカギの手が後ろでセレナの手を固く握った。
「それも手だが、ジオンが約束を守る保証はない」
「じゃあ、皆殺しだ」
「少尉の話を最後まで聞け!」
 バンザが兵を一喝した。
「今、パパたちが抜け道を探してる」
 ざわめきがおこった。
「今まで抜け道の事は黙ってたが必ずある。そこから脱出だ」
「ジオンが気がついたら」
「俺が足止めする」
「ジム一機でですか?」
「そうだ。だが連中は迂闊にジムを攻撃できない」
「少尉の腕は目にしてますが、相手は中隊規模ですよ」
「彼女に協力してもらう」
 アカギはセレナに目をやった。
「どういうことですか?」
「中尉に何ができるんっすか?」
「その女はジオンなんだよ!」
 セレナはその言葉に動揺した。
「誰だ! 今言ったの!」
 ウォーターがセレナを庇うようい前にでて怒鳴った。大柄な彼が迫ると中々迫力があった。隊の誰も文句は出せない。
「下がれよ。ウォーター」
「は、はい、少尉」
「ありがとう、ウォーター」
 セレナが小声で礼を言った。
「俺の命を心配してくれた人に文句は言わせねえよ」
 そう言うとウォーターはセレナに片目をつぶって見せた。
「ミデアの救助で目にした者もいると思うが彼女はジオンの人間だ」
 大きなざわめきが起こった。セレナのことを連邦の中尉だと思っていた者が大半だったから当然といえば当然の反応だ。
「ジムには彼女も搭乗してもらう。目的である彼女が同乗していればジオンも手は出せないわけだ。そこでできるだけ時間を稼ぐ」
「最初から彼女差し出せばいいじゃないか」
「おい、今、てめえなんて言った」
 ニックが男の胸倉を掴んだ。ニックもウォーターに次ぐ大男だ。胸倉を掴まれた男は慌てて訂正する。
「よせ! ニック」
 バンザが制した。
「へ、へい……」
 ニックは男を放り出した。
「お前たちが動揺するのは分かる。だが、さっきも言ったがジオンが約束を守る保証はない。"サイド2"のことを忘れるな! 彼らは民間人数万を致死性のガスで皆殺しにしている。警告無しでな」
 アカギは腕時計を見た。タイムリミットは近づいてきている。
「俺はジオンを信用していない。やつらが約束を守るなんてこれっぽちも思っちゃいない」
 兵士たちは口々に言い合った。アカギの話に納得する者、疑問を称える者。しかし、ほとんどが納得側だった。
「聞け! 俺たちは連邦の兵士だ! 多少、"悪さ"もしたがそれでも勇敢な連邦の兵士だ!」
「そうだ!」
 指揮官の言葉に兵士たちの中から声が上がった。
「ジオンに降伏などありない!」
 バンザは初めて聞くアカギの連邦軍士官らしい言葉に驚いていた。
「そうだぜ! 」
「最後まで戦いましょう! 少尉!」
 勢いに乗ってきた兵士たちの中から予想外の声まで飛び出してきた。
 いい流れだな。
 アカギは思った。
「そうしたい気持ちはあるが、冷静な戦力分析はジオンの方が遥かに上だ。戦力差は多分10対1。勝ち目は残念な
がらないだろう。だが連中を出し抜く事はできる。それが撤収作戦だ」
 兵士たちが静まり返る。
「ジオンが指定した時間まであとわずかだ。防衛線はもういい。全員で抜け道を探せ! 」
 アカギの声が大きくなる。
「やろうぜ! 奴らの言うとおりになるかってんだ!」
「そうだ!」
「地雷探知機を使えばいいんじゃないか? あれは空洞部分も感知できるぜ」
 兵士たちに活気が出てきた。最初の時の疲れきった様子はない。
「よし! すぐに取り掛かれ!」
「了解です! 少尉」
「みんな"死ぬ"気でな!」
 ざわめきが一瞬、止まった。
「あ、えーと……ジョークだよ。さっさと行け」
「よーし! 少尉のくだらん冗談は忘れて全員、仕事にかかれ!」
 バンザの一喝とともに兵士たちは全員は動き出した!
「なあ、今のジョーク、イマイチだったかな?」
 真剣な顔で聞くアカギにバンザは肩をすくめてみせた。


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