真夜中の占い館で散歩
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ガンダム戦記 白のプラトーン ⑳



「あんた! そこを持ってくれ!」
 アカギに部屋に戻るように言われていたセレナだったが聞こえてくる爆音や叫びが気になり、つい部屋から出ていた。
 階段を下りると目に入ったのは運び込まれる負傷兵だ。血まみれの人間など見たことのないセレナはその光景に呆然とする。
 運び込まれた負傷した兵士は、机の上に寝かされた。
「おい! あんた! 手を貸してくれ!」
 セレナと目が合った怪我人を運び込んできた兵士がそう呼びかけてきた。だが、慣れない状況に戸惑っていたセレナは、すぐに反応ができない。
「急いで!」
「は、はい!」
 きつい口調で急かされたセレナは階段を急いで下りて駆け寄る。
「どうすれば……」
「そこを! 肩を押さえて!」
「は、はい!」
 セレナは寝かされた負傷兵の肩を押さえた。
「スタックス、動くな! 治療ができない!」
 痛みのせいかスタックスはもがく。軽症の他の兵士が足を押さえつけた。動きが一時的に止まったのを見計らって衛生兵のドクは、すかさず注射を打った。
「これで少しは楽になる」
 ドクは注射器のピストンバーを押しながらそう言った。
「くそったれ! ジオンめ! くそ! 必ず仕返ししてやる!」
 血まみれの兵士の、その言葉にジオンの人間であるセレナは怯む。
 負傷兵が物凄い力で身体をのけぞらした。セレナの押さえていた手が撥ね退けられる! 同時に吹き出た大量の血がセレナにかかった。
「きゃあ!」
 驚いたセレナはそこから離れた。
「暴れるな! スタックス! おい! やばいぜ、ドク」
 足を押さえていた兵士は痛みで暴れるスタックスの肩に飛びついて必死に押さえ込んだ。
「くそっ! 止血しないと!」
 ドクは血でみえにくくなっていたスタックスの腹からまだ見つけていなかった傷を探した。
 恐る恐る近づくセレナ。
 血と叫びに、その場から離れたいはずなのに、何故かもうひとつの感情が彼女の足を止まらせていた。

 何かをしなくては!

 瀕死の人間を目の前にしたセレナの頭に思い浮かんでいたのは、それだった。
 その思いが彼女を前に進ませた。 が、今、彼女が立ち向かおうとしているのは"死"という現実なのだ。
 その時、瀕死のスタックスの手が突然、セレナの手首を掴んだ! 驚きと恐怖で声もだせなかった。
「ちきしょう……」
 セレナの手首を握るスタックスの手に力が無くなっていくのが分かる。
「あった! ここだ! 止血するからな」
「おい、ドク……」スタックスを押さえていた別の兵士がドクに声をかけた。
「必ず助けてやる」
「ドク!」
「なんだ!」
 スタックスを押さえていた兵士は悲痛な表情でドクを見ている。
「こいつ死んじまった」
 言われたドクは、慌てて人工呼吸や心臓マッサージを施したがスタックスの鼓動は戻らなかった。
「ちくしょう! ちくしょう! 何で死ぬんだ! このやろう!」
 ドクが怒り任せに避けてあった椅子を蹴飛ばした。
 セレナは自分の手首から死んだ男の手を外す。
 強く握られていた為か、感触がいまだに残っている。セレナは、その手首から何かを払うようにさすった。
 
 なにが……何が起きているの?

 ふと、目の前のガラス窓に自分の姿が映っているのに気がつく。ベージュ色の連邦軍の制服が真っ赤な血に染まっている。
 まるで自分ではない様な姿がそこにはあった。
 呆然としていたセレナだったが、ふと、目に暖かいものを感じて我にかえった。

 泣いてる?  私泣いてる……

 セレナは、いつの間にか涙を流していた。
 何の力にもならなかった悔しさに
 死んでいった見知らぬ男のために。


 外では今だ爆発音が続いていた。


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