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真夜中の占い館で散歩
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ギャリー・トロット⑦(改)

 片目を撃ち抜かれた怪物クー・シーが倒れ、銃撃は終了した。
 戦闘エージェントたちは用心深く怪物の死体に近寄っていく。
「死んでるのか?」
 アサルトライフルの狙いをつけたままでラッシュが言った。
 それを聞いたリーパーはハンドガンを抜いてクー・シーの頭に2発撃った。
「おい!」
 突然の発砲に驚いたラッシュがリーパーに眉をしかめる。
「これで安心したろ?」
 そう言ってリーパーはにやりと笑った。

 銃弾の撃ち込まれた目からはオイルの様な体液が流れ出している。
 アンジェラ・ノイマン博士はさっそく死んだクー・シーの頭部の前に座り込むと傷口から肉片や体毛を採取しはじめていた。その傍ではトルートが死んだ怪物の姿を見つめていた。
「One Shot, One Kill(一撃必殺だ!)」
 その後ろからアーチャーが肩を叩く。
「どうした? 浮かない顔だな」
「ちょっとな」
「いい射撃だってのに。今度は動物愛護精神に目覚めたのか?」
「ひっかかる事があるんだよ」
「何が?」
「アーチャー、お前、この怪物を狙ったてたか?」
「はあ? そりゃ狙ってたさ。俺だけじゃなく他のやつらもな」
 トルートは、違和感を感じていた射撃の瞬間を思い出していた。
 引き金を引く瞬間、スコープ越しに先に他の弾丸が命中したように見えた。だがあまりにも一瞬の事なので事実なのか何かの思い違いなのか自信が持てずにいた。
「変な奴だぜ」
 アーチャーは、そう言って肩を竦めるとトルートの隣でへたり込む麻季を見下ろす。
「さて、お譲ちゃん。お前、一体何者なんだ?」
 アーチャーの質問に何も答えられない麻季は戸惑いながら彼を見つめた。
「黙ってないで何とか言えよ」
 その時、隊長のスヴァローグが傍にやってきた。
「何か話したか? アーチャー」
「いや、何も。ボケっとしたままですよ」
 そう言ってアーチャーは肩をすくめる。
「会社のよこした別のチームのスタッフとしても歳が若すぎるな」
「アジア系は若く見えるって言いますよ」
「確かにそうかもしれん」
 スヴァローグは中腰になると麻季の顔を覗きこんだ。
「おい、お前はどこのチームだ? いつここに来た?」
 麻季は戸惑いながらスヴァローグの言葉を聞きとっていた。
「日本人か? 中国人か? 所属は? いつここに来た?」
 まくし立てるスヴァローグに麻季は戸惑った。
「お前のボスは誰だ? 研究チームの人間なのか? それとも他社の人間か?」
 麻季はここに来た経緯を教えようと身振り手振りと日本語を交えた片言の英語で説明した。たが麻季自身も理解できてない事を話せるわけがなかった。結局、麻季の話す英語も日本語も相手に理解されていなかった。
 その様子に見かねたのかトルートが口を出す。
「なあ、隊長。彼女、英語は苦手の様だぜ」
「お前、中国語が分かるのか?」
「いや、彼女の使っているのは日本語だ。この娘は日本人だよ」
 トルートには麻季の言葉が通じていた。なぜなら彼も日本人だからだった。
「日本人? 日本の企業が我々を出し抜いたのか?」
「さあね。そんな事は言ってないみたいだったよ」
「言葉が分かるなら、お前が尋問しろ。何者か突き止めるんだ」
 スヴァローグは、そう言って立ち上がるとトルートの肩を叩いた。
「俺はこういったのは苦手なんですがね」
「命令だ。何者か聞き出せ」
「了解、隊長」
 今度は、トルートが麻季の前に片膝を着いた。
「こんにちは、お嬢さん」
 麻季は上目づかいでトルート見る。
「日本語、分かるんですか?」
「まあね」
 トルートは、麻季を安心させようとにっこりと笑う。
「なあ、なんで君は、こんなところにいるんだ?」
 トルートの口調は、表情の様にやさしかったので麻季も安心する。さっきの偉そうな大男とは大違いだ。
「さっきまで家にいた筈なの。でも気が付いたらあの建物の中にいた」
 そう言って麻季は降りてきた遺跡の様な建物を指差した。
「なんでそんな事に?」
「わからない。バイトから帰ってきて、パソコンのメールを開いただけなのに。確かに何か様子がおかしかったけどこんな事になるのか、全然意味が分かんない!」
 麻季は少し興奮気味になっていた。
「ああ、わかった。わかったよ。信じる」
 トルートが麻季をなだめる。
「本当に?」
「本当さ。何しろここは不思議な事が多いから」
「ここって何処なの?」
 トルートは黙っていた。
「ねえ、トルートさん。あなたはトルートって名前ですよね?」
 戦闘服の男たちの会話をなんとか聞きとっていた麻季はトルートの名前を言った。
「お願い」
 トルートは困った様な顔をしていたが麻季の懇願につい折れてしまう。
「俺たちは"ナイト・ワールド"って呼んでる」
 そう言ってトルートは頭を掻いた。
「なあ、これって立場が逆じゃないか? 質問してたのは俺の筈だったよな」
「あ? ああごめんなさい。いいよ。じゃあ、何か質問して」
 麻季は、あっさりとそう言った。
「まず名前からだ」
「私、三井麻季。高校二年で日本の××市に住んでる。カラオケでよく歌うのはクリスタル・ケイの曲」
「彼女なら知ってる」
「本当?」
「ユーチューブで見た。彼女の曲はいいね」
「うん、そう思う」
「よかった。こんなところに仲間がいた」
 そう言ってトルートは片目を瞑ってみせた。ちょっとふざけた仕草に麻季はつられた笑いだしそうになる。
「なあ、俺たち友達になれると思わないか?」
「え?」
 トルートは右手を差し出した。麻季もおどける様なトルートの仕草につられて、ついその手を握った。
「これで、俺たちは友達だ。安心しろ、友達の事は必ず守ってやる」
「ありがとう……」
 小さな声でそう返しながら麻季も軽く笑った。
「さっそくだが、アサキ。友達の俺に、ここに来た経緯をもう一度、ゆっくり話してくれ」
「う、うん」
 麻季は、もう一度、経緯を話した。パソコンに入っていた不審なメール。そこからの記憶がない事。その前のバイトと学校でも出来事。語学と美術とスポーツが好きな事。果ては片想いの相手の事まで。
 しばらく話を聞いていたトルートだったが有益な情報を得る事ができないでいた。要するに何の設備も装置もなく、この娘はこの空間にやってきたという事だ。そんな事で隊長は納得させられるわけがない。だが彼の性格からして容赦ない方法もとりかねない。
 さてどうしたものか……
 トルートは小さくつぶやいた。
「え?」
「いや、ありがとう、麻季。大体経緯は分かったよ。隊長に説明してみるが……納得してくれるかな」
「あの人、何だか怖いよ」
「当たってる。彼は怖い」
 スバローグは片目を瞑ってみせた後、立ち上がる。
 麻季は不安げな顔つきで歩いていくトルートを目で追った。周りにいる彼と同じく銃を抱えた他の人間はどうにも目つきが厳し過ぎて少し怖い。だがトルートは違う。同じような格好をしていてもどこか優しいし、面白い。麻季はこの中で彼だけは好きになれると思った。
 だが実は、部隊でのトルートの印象は、まったく逆のものだった。麻季はそれを知らない。様子を見ていた隊員たちの中にはトルートの見たこともない表情にに少々驚いている者もいた。
 隊長のスヴァローグもそのひとりだった。彼のところにトルートが来るといつもの様な態度で報告し始めた。
「彼女は日本の高校生だそうです。隊長? 聞いてます」
「あ? ああ、続けろ」
「気がついたらあの建物の中にいたと言ってます。後は、何もわからないそうです。他に有益な情報も持っていませんでした」
 そう言って、トルートは背後に建つ遺跡らしき建物を指差した。
「ふざけた話だ」
「ええ。ですが、あの娘の言葉は多分本当の事ですよ。嘘にしてはなんというか……」
 トルートは少し言葉を選ぶ。
「出来が良くない」
 

 二百メートルほど離れた瓦礫の山の上からチームを見下ろす者がいた。
 彼はスコープ越しに魔獣クー・シーが動かないのを確認するとライフルを下した。
 戦闘に慣れた人間の集まりであるはずのガート・ドッグスの隊員の中で誰もクー・シーを狙撃した彼の存在に気がついていなかった。
 彼は再びナイトビジョンスコープに眼を合わせる。
 スコープの中には不安そうに辺りを見渡す麻季の姿が映っていた。


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