真夜中の占い館で散歩
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悪魔は涙と取引する②

 Ⅱ

 折り合いをつける―

 こいつは人生において大切な心得のひとつだ。
 俺は、トマトソースでサインされた契約書を見て、ため息をつく。
 不本意ながら俺は、"折り合いをつける"事になってしまった。
 ムーンという少女の父親を探さなくてはならなくなたのだ。
「仕事、受けたのか?」
 尋ねるドイルに俺は、ドイルに契約書をちらつかせた。
「これはこれは。トマトソースでサインとは」
「俺も初めてだ」
「それでも契約成立だろ?」
「どうかな、頼まれたのは人探しなんだが」
「あんたなら楽勝だろ」
 ドイルの言葉に俺は片眉を上げた。
「それより、こいつを見てくれよ」
 俺はポケットに突っ込んであったフェンニル硬貨を一枚出すとドイルに放り投げた。ドイルはそれを片手で受け取る。
「フェンニル・コイン……魔界の通貨か。ツケは、こいつで支払いを?」
「違うよ。よく見てくれ」
 その硬貨はムーンが出した中の一枚だったが僅かに乾いた血が付いている。
 ドイルは硬貨に鼻を近づけて臭いを嗅いだ。
「ふーん、割と新しい血のようだが。で、こいつをどうしろってんだ?」
「分かってるだろ? あんたの得意な事だよ」
「血を嗅ぎわけるなら吸血鬼だってか? いいさ、ツケの為ならやってやるさ」
 ドイルの冗談めいた言葉に俺は肩をすくめた。
「……さてさて、この臭いは」
 ドイルはコインを受け取ると鼻先に近づけた。
 吸血鬼は血に対して敏感だ。バーテンをしてるドイルは特に。何しろ同じ吸血鬼向けに"血のカクテル"を作ってるくらいなのだ。同じ赤い血でも何種類かあってそれぞれ味が違うそうだ。ドイルに言わせると"O型"の血液がどのブレンドにも合って美味いそうだが、俺は決して飲みたいとは思わない。
「ふむ……こいつはお前さんと同類の血だ」
「同類?」
「悪魔の血だよ。間違いない」
 俺は飲みかけの酒を飲みほした。
「悪魔が絡んでるとなると面倒だな。それでも仕事を受けるか?」
 俺は、ドイルからフェンニル・コインを取ると席から立った。
「どうかな……」
「こう言っちゃなんだが、これに悪魔が関わってるとしたら手を引いたほうがいい。悪魔のあんたに言うのも変だが、連中は危ないぜ」
 ドイルは、いつになく真剣な表情でそう言った。
「まだ関わってると決まった訳じゃない。単に付いていた血が悪魔のだったってだけだろ」
「だからじゃないか」
「まあな……だが」
 俺は代金を多めにカウンターの上に置くと席を立った。
「もう、前金には手をつけちまったしな」
 


 俺はムーンの住む人間のブロックに来ていた。
 俺の姿を見つめる人間もいるがそれほどは驚いてもいないようだ。様子からすると、ここに悪魔が出入りしているのは間違いない。まあ、その方が仕事がしやすい。
 俺は、ムーンの住む場所から一番近い場所にある店に入るとムーンの父親の事を尋ねてみた。
「ああ、顔は知ってるがその程度だよ。何かあったのかい?」
 愛想の良い店主が食材を鍋に放り込みながらそう言った。悪魔の俺にも少しも態度は変えない。
「いなくなったんだ。ムーンから頼まれて探してるのさ」
「そうかい。でも俺も大した事は知ってないよ」
 店主は杓子で鍋の中をかき回し始めた。
「ああ、ところでムーンの方は元気だったか? 重い病気にかかったって聞いたけど」
「俺と会った時は普通だったよ」
「そうか、よかったよ。あの子はいい子だから」
「なあ、ムーンの父親ってのは、どんな男だったんだ?」
「どうって、特に変わったところもない。ちょっと無口だが、それだけだ。いや……」
 店主は何か思い出した様だった。
「そういえば仲がいいのがいたのを思い出した」
「いいね。教えてくれよ」
「名前は知らないがあんたみたいな連中とつるんでいた」
 俺と同じというと……
「悪魔とか?」
 店主は肩をすくめた。
「悪魔とつるんでたって別に驚かないよ。この辺りでは珍しくない。ここも悪魔の客が多いしね。特に悪さをするんでなければこっちも問題ないさ」
 いい店主だ。
「少し珍しいのは二人してよく通ってた場所が、ちょっとね」
「何だよ?」
「教会によく通っていた」
 悪魔が教会にか?
 確かにそれは珍しい。


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