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真夜中の占い館で散歩
オリジナル小説の公開です
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真夜中の占い館で散歩⑥

6、運命なんて

 啓太は息を切らしながら屋上のドアを開けた。
「相葉さん!」
 屋上のフェンスの傍には、いずみが立っていた。
 啓太の声に一度振り向いたが、何も興味がないように再びそっぽを向ける。
 その瞬間、フェンスが吹き飛んだ。破片が空中に飛び散った後、落下していく。
 何も無くなったフェンスの跡にいずみは一歩踏み出していく。
「相葉さん! やめろ! やめろってんだ!」
 いずみは近づく啓太の方に振り向いた。
「相葉さ……ん?」
 啓太はその顔を見てぞっとして立ち止まった。
 温和そうないずみの面影はどこにもない。肌は死んだように青白く、瞳の色は灰色に澱んでいた。屋上の風に煽られる黒髪も黒い別の何かに見える。
『なぜ、止める?』
 いずみとは思えない声が発せられた。地の底から響く声とはまさにこんな感じだろう。いずみは啓太を無気味な上目遣いで睨みつける。
「おまえ……相葉さんじゃないな?」
 いずみの様なものがにやりと笑う。
『どうにも逆らうので、いずみの身体に入り込ませてもらった。このほうが仕事がしやすい』
「仕事って?」
『いずみの死』
 いずみの様なものは、あっさりとそう言った。
「やめろ! 相葉さんは生き残ったんだ! もう事故死は間逃れてるんだよ」
『だから"修正"する』
「やめてくれよ。頼むから相葉さんを殺さないでくれよ」
 懇願する啓太を見ると、いずみは首をかしげた。
『なぜ? 死はいずみの望む事なのに』
「相葉さんが? 嘘いうな!」
『俺はいずみをずっと見てきてるから知っている。いずみは生きる事が辛いんだ』
「お前がそそのかしてるだけだ。いずみさんの身体から離れろ!」
 死神に憑かれたいずみは人差し指を立てて左右に振る。
『わかってないな。ほんの数日前からいずみの人生に立ち入ってきたお前が何を知ってるというんだ? 知っている
のか? いずみの苦しみを! 悲しみを! 憎しみを!』
 いずみの様なモノは異様な迫力でそう言った。啓太は少し恐ろしくなっていく。
「ど、どういう事なんだよ」
『本人の口から聞け……』
 いずみの顔が一瞬、いつのも感じに戻っていた。
「啓太くん?」
「相葉さん! 大丈夫!」
 どうやら身体の自由を死神から戻されたらしい。 声もいつものとおりだ。
「ごめん、啓太くん。私、言ってない事が色々あるんだ。私、本当は、あの時、死にたかった」
「なんで? 」
「すごく孤独だったのよ。私なんか誰も見てないと思ってた。いなくなったって誰も悲しまないだろうって」
「そんなこと、そんなことないって」
 啓太は涙声で言う。
「啓太くんと知り合えてよかっ……」
 何かを言いかけたいずみの手首を啓太ががっしりと掴んだ。
 驚いた顔で啓太を見るいずみ。
「絶対、相葉さんは、死なせない! 絶対!」
 啓太の目は真剣だった。その手の暖かさはいずみにも伝わっていく。
「啓太くん……」
 だが次の瞬間、再びいずみは豹変した!
『分かったろ? 小僧。運命は変えれない。いずみが死を望んだ時に生まれたルートはそのままだ。それは、いずみの運命さ。他人のお前に邪魔はできはしないんだよ』
 死神が再びいずみの意識を乗っ取っていた。身体がビルの下に飛び降りようとする。
「このやろう!」
 それを阻止しようと啓太は力いっぱい踏んばった。
「絶対、いやだ!」
 啓太の身体がじわりじわりと引きずられていく。
「なろーっ!」
 いずみの手を掴む啓太は必死の形相だ。
「啓太……くん?」
 いずみの意識が戻った。しかし二人の身体は屋上から落ちる寸前だった。
「ちくしょう!」
 啓太があきらめかけたその時だった。襟首を誰かが掴む。
「ちょ、ちょっと、あんた重いわよ」
「紗璃さん!」
 紗璃は片目を瞑ってみせると啓太の身体を引っぱった。いずみの身体も一緒に戻されていく。引っくり返った啓太の上にいずみが倒れてきた。
「うがっ!」
「ごめん! 啓太君」
 いずみが慌てて啓太の身体からどいた。
「元に戻ったんだね。いずみさん。よかった」
 心配そうに見つめるいずみを見て啓太は、ほっとした。
「がんばったね、少年」
 啓太の頭を紗璃が撫でる。
「さて、こっちも片付けなくっちゃね」
 紗璃が背後の宙を睨みつけた。
 その先には、蜃気楼の様に揺れる中では黒い靄が浮いていた。
「あれが死神ですか?」
 啓太といずみが不気味に浮かぶ黒い霧を見て怯える。
「大丈夫。恐れる事なんてないわ。いずみちゃんの死の運命を取り消した今、あいつの力は半分も無いもの」
「でも、まだそこにいるし」
 紗璃はにやりと笑った。
「少年、ババ抜きって好き?」
「はぁ?」
 黒い靄は三人の周りを回り始めた。
『お前、只の人間ではないな。何者だ?』
「ただのしがない占い師」
『うらないし? 』
「あんた、さっき、いずみちゃんの運命に少年が口出しできないみたいな事を言ったわね」
『その通りだ。死の運命は変えられない』
「違うわ! この少年は、今、いずみちゃんの心に深く入り込んでる。少年の心にもいずみちゃんの事がしっかりとある。わかる? 新しい運命の分岐点ができたのよ。二人で進むって運命の道がね」
『何を言ってるんだ! おまえは』
 黒い霧の声が動揺していた。
「"死の運命"である"あんた"という道は途切れた。その証拠にあんたの身体は急激に弱っている筈」
『うぐ……おまえは、強引に運命を変えたというのか? だが俺だけでは消滅はしないぞ。お前等も道連れだ』
「悪あがきね。しかもたちが悪い」
 黒い靄は紗璃に飛びかかった。
 紗璃はカードを飛ばした。53枚のカードは綺麗な円を空中に描いていく。
 円の中に飛び込んでいった黒い靄はシールドと化したカードの群れに阻まれ弾き返された。
 恐ろしい奇声が響き渡ったるのと同時に空中に放電が起こりカードが飛び散っていく。
 宙に舞うカードの中から紗璃は一枚を掴んだ。
「さあ、これがあんたの運勢よ」
 紗璃がカードの裏を返すとそこにはジョーカーの絵が描かれていた。
 黒い靄が紗璃の持ったカードの中に吸い込まれていく。必死に抵抗するがそれも空しく黒い霧の全てはジョーカーのカードに飲み込まれていった。
「はい! 一丁上がり」
 啓太といずみは不思議そうな顔をしてジョーカーのカードを見つめた。
「どうなってるんですか?」
「ジョーカーはワイルドカード。つまりなんでもありなのよ」
 紗璃は、そう言うとカードを指で弾いた。するとカードは、あっという間に燃え上がり灰になってしまった。
 その様子を啓太といずみは呆然と見つめるだけだった。

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