真夜中の占い館で散歩
オリジナル小説の公開です
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ギャリー・トロット(23)

 強引に開けられた入口の中にライトが照らされた。
 リーパーとトルートが先陣をきった。リーパーの右腕には包帯が巻かれていた。先ほどのクー・シーとの攻防戦で負ったものだ。
 外からのライトが届かなくなった地点でG36E備え付けのフラッシュライトが点灯された。ダイオードの冷たい光が光線を作らずに対象物を照らした。
「こちらトルート。異常なし」
 ハンドフリーのマイクでそう告げるとスヴァローグにカヴァーされてアンジェラ・ノイマン博士が建造物の中に足を踏み入れた。
 この"ナイトワールド"と呼ばれる場所では電波は使えた。だが不思議な事に通信時のノイズがこの世界では起きなかった。ある科学者は、それがこの世界が亜空間の証拠だと仮説を立てていた。地球上でも宇宙の別の場所でもないということだ。
 アンジェラの後に他の隊員に付き添われてレプラコーン社の重役クロフォードが後に続く。
 中の様子は別の隊員がムービーカメラで撮影していた。
 壁には奇妙な絵が彫り込まれていた。その絵をアンジェラが覗き込む。
 絵は人とそれと対峙する巨人だった。巨人の周りには不思議な生き物が描かれている。知られているどの動物にも該当しない姿をしている。
 アンジェラをデジカメを使って絵を撮影していった。
 その時、アンジェラは誰かの視線を感じた。
「何?」
 背後にいるスヴァローグかと思ったアンジェラが振り向く。
「どうしました? 博士」
 何かあったと思ったスヴァローグはアンジェラに尋ねた。
「いえ……なんでもない。何か変な感じがしたから」
「きっと神経が高ぶっているからでしょう。なんたって世紀の大発見です」
「そうね。そうかも」
 アンジェラは、再び撮影に集中した。
 だが、アンジェラの感じた視線は気のせいではなかった。確かに彼女らを見てる者がいるのだ。


 *  *  *  *


「アンジェラさん?」
 空間に映し出された立体映像に麻季は。思わず呼びかけた。
 しかし映像であるアンジェラは、何も答えない。 
「無理無理。それって本物じゃないから」
 光輝が立体映像に呼びかけた麻季にそう言って肩をすくめる。
「ねえ、みんなどこにいるの?」
「僕らと同じ場所。ここにいるよ」
「みんなに会いたいわ」
「それはよした方がいい。特に今は」
「何故よ」
「さっき聞こえた大きな音は、恐らく爆発物を使ったんだ。ここに強引に入り込んだのはまずかったね。起こさなくていい連中を起こしてしまったからね」
「起こさなくていい連中?」
「今に分かるよ」
 光輝の言葉に不安を感じながらも麻季は映像を見守るしかなかった。


 *  *  *  *


 トルートのフラッシュライトが扉を照らした。
「おい、扉がある」
 アンジェラが駆け寄った。
「何か書かれてる」
「非常口ってか?」
「笑える」
 トルートは肩を竦める。
「クロフォードさん。建造物内での爆破は非常に危険ですから止めてください」
 アンジェラは駆け付けたクロフォードにきつい口調でそう言った。
「分かってるさ。私も馬鹿じゃない。室内の方が貴重なものがあるはずだからな。だがどうやったら開くんだ?」
「X線カメラを使ったらどうでしょう。中の構造が分かるかも」
 付き添いの隊員の一人が気を利かせてそう言った。
「そうか、確か装甲車に積んであったな」
「x線カメラ? そんなものも持ち込んだんですか?」
 アンジェラが呆れた顔でそう言った。
「SWATでも使っている建物内や爆発物を調べるヤツ。それを使えば……」
 その時だ。
 目の前の扉が開きは始めた。
 扉の動く音に驚いたカートドッグスの隊員全員がG36Eアサルトライフルの銃口を音の方に向けた。
「油断するな!」
 開いていく扉の前でトルートもアサルトライフルを構える。
 やがて開ききった扉の奥にはさらに深い闇が広がっていた。

 
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人魚姫救出大作戦!(6)

 潜水艦は深海の闇の中を進み続けていた。
「ねえ、まだ着かないのー?」
 退屈になってきたキーラがけだるそうに言う。
「もう少しだエビ。すぐそこの珊瑚を右に曲がれば見えてくるエビ」
 エビ騎士は呑気に言った。
 王様は王様で水槽に浮いたまま昼寝をしてた。
「私も人の事言えた義理じゃないけれども、なんかこの空間、緊張感ないよね……」
 そうこうしてるうちに潜水艦は、目的地に近付いていった。
 薄暗い改訂に城の様な形をした岩がある。幾つかの穴からは僅かに光が漏れていた。
 潜水艦は岩城の前で停止した。
「着きましたよ。魔法使い様に王様」
 居眠りしかけていたキーラはリクライニングシートから跳ね起きた。
「あれが海の魔女の根城ね……うーん、なんか不気味」
「どうしましょう、キーラ様」
 王様は心細そうな声でたずねる。
「とりあえず話し合い。娘さんの行方を聞きだすのよ」
「ではお願いします」
「わかった……いや、それちょっと依存率高くない?」
「私は頼ったら頼り切る主義なので」
「なんて王様。そんなんで国民がついくるわけ?」
「はははは、国民といっても魚介類ばっかですから、脳みそが豆粒くらいな連中ですから統治もなにも……ハッ!」
 横で話を聞いていたエビ騎士が王様を冷ややかな目で見つめている。
「と、とにかく魔法使いの事は魔法使い。お頼みします、キーラ殿!」
「しかたないわね……じゃあ、着替えるからちょっと待ってて」
「着替える? 何に?」
「潜水具よ。水の中じゃ、呼吸できないし」
「魔法使いですよね。魔法でこう、ぱぱっ! と……」
「あのねー魔法がなんでもできる万能のものと思わないでよ。そんな事ができたら彼氏がすぐできるわ……いえ、苦労しないわ」
 王様とエビ騎士は顔を見合わせた。
「わかりました。では、支度、待ってますから」
「悪いわね、じゃあ……」
 キーラは上着を脱いだ。
「悪いわね……じゃあ」
 王様とエビ騎士はその場に居座った。
「悪いわね! じゃああ!」
「あ、お構いなく」
「お構いなくじゃないわよ! 着替えるんだから出てってよ!」
 キーラは二人を潜水艦から叩きだした。


  *  *  *  *


 館の前に放り出された王様は、結局、キーラと一緒に海の魔女の館へ行く事になった。
 潜水具を着たキーラが潜水艦から降りてきた。その姿は分厚い金属の鎧を着こんだ様だ。
「あ、アイアンマンだ」
「違う!」
「もっと、スリムな潜水服ってなかったんですか? あなたヒロインでしょ」
「でも深海だしオモリを仕込んでいないと浮いちゃうんだから仕方ないのよ」
「変なところでリアルなんですね。他はユルい設定なのに」
「そこは突っ込まないで行きましょう」
 3人は扉の前に立った。
「すいませーん」
 館から返事はない。
「すいませーん。海の魔女さーん」
 ノックをしてみたがやはり反応はない。
「留守なんでしょうか?」
「どうかしら」
「キーラさんの魔法でなんとかならないエビ?」
「そうね。ここは私の魔法で……ちょっと離れててね」
 キーラは二人を端に寄せると潜水艦に戻っていった。
「どんな魔法をつかんでしょうカニ……いやエビ」
「キーラ殿のことだ。きっとすごい魔法を使うに違いない」
 しばらくすると潜水艦から声がした。
「二人とも、もうちょっと離れて」
 二人はさらに端に寄った。
「もう少し離れてね。でないと死ぬからね」
 あり得ないキーワードを聞いた二人は慌ててさらに離れた。
「オッケー。じゃあいくわよ」
 潜水艦から魚雷が発射された。
 扉に命中した魚雷は爆発を起こし周辺を吹き飛ばした。
 ものすごい泡と残骸と泥が周囲を覆い隠す。
 その様子を見つめながら王さまは思わずこう言った。

「えっ? 魔法は?」




 
 

ギャリー・トロット(24)

 どの位のの時間が経ったのだろう。
 眠りを妨げる者さえいなければさらに眠り続けていたに違いない。
 感覚が元に戻っていくのが分かる。あと、数時間もすれば完全に元に戻るはずだ。
 そうすれば、やりかけの仕事に再び取りかかる事ができる。
 あと少しだ。
 あと少し……


 新たな扉を開けた隊員はトルートとリーパーを先頭に中に入った。
 アサルトライフルのフラッシュライトで中を照らすが範囲は狭い。全容は分からなかった。
「誰か、照明を持ってきてくれ」
 広範囲を照らすライトが持ち込まれスイッチが入れられた。
「嘘だろ」
 照明の当たられた部屋はその姿を現したが、それは乗り込んできた多くの者の予想とは違うものだった。
 古代の遺跡を思わせる装飾や刻まれた文字から想像してたのは、今まで見続けた様な石壁に覆われた室内だったが目の前にあるのは、まるで現代のCICか映画に出てくる宇宙船の内部だ。
 トルートは一瞬、これが誰かのジョークではないかと疑った。
「こいつ、もしかしてコンピューターか?」
 後から入ってきたアーチャーが何かの機器を除きこんでそう言った。
「あまり触らないでよ、兵隊さん」
 アンジェラが強い口調で言う。
「兵隊は辞めた。今はプライベートオペレーターだ」
「傭兵の最近の呼び方?」
「そうさ。悪くないだろ?」
「どうかしら」
 アンジェラは肩を竦める。
「悪くないさ」
 アーチャーは言い聞かせるように呟いた。

 クロフォードは、興奮しながら部屋の中を見て回っていた。
 どうやら彼の希望に大いに沿ったものらしい。
「素晴らしい。素晴らしいじゃないか。さっそく科学部門のスタッフを呼び寄せよう。一部も設備を持ち帰りたいな。何か取り外しのできる機器はないかな?」
 エンジニアでも科学者でもないクロフォードに機器の取り外しは無理だったが、それでも外せそうな部分がないかと探し回った。
「クロフォードさん、未知のテクノロジーです。迂闊に触られてはトラブルの可能性も……」
「分かってる。分かってるさ、ノイマン博士。だが、探さずにはいられないんだよ。わかるだろ?」
 アンジェラは、呆れてため息をついた。
 その時、クロフォードの姿が突然消えた。
「クロフォードさん?」
 何かの冗談?
 アンジェラはそう思って彼のいた筈の場所を覗き込んだ。だが違った。
 床に空いた穴に怯えた表情のクロフォードがいた。そのまま穴の奥に引きずり込まれていく。
「誰か! 助けて!」
 アンジェラは大声で助けを呼んだ。
 その声にトルートを含めたカートドッグスの隊員たちが駆け寄る。
「どうした!」
「クロフォードさんが何かに引きずり込まれたの」
 トルートは穴の中をライトで照らしてみた。穴は深く誰の姿も見えない。
「何に引きずり込まれた?」
「わからない。でも何かが彼の両肩を掴んでいたのが見えた」
 アンジェラの表情も怯えている。多分、本当だろう。
 スヴァローグもライトを照らして中を見た。
「4メートル程下に床らしきものが見える。こいつは通路だな」
 トルートも、もう一度中をのぞいてみた。確かに底が見える。
「誰かロープを持ってこい。俺が降りてみる。後、2人程、一緒に来い」
 スヴァローグは、リーパーとラッシュを選んだ。
 リーパーは待ってましたとばかりにライフルを背中った後、ハンドガンの安全装置を外した。
 対してラッシュはうんざり顔だ。
 部屋の雰囲気は一気に緊迫していた。さっきまでの発見の高揚感はどこにも残っていない。
「トルート、後を頼むぞ。博士の護衛は任せる」
「了解、隊長。用心してください」
 スヴァローグはにやりと笑う。
 誰に言ってる?
 口には出さないが、顔はそう言っていた。
「行くぞ。二人ともついて来い」
 スヴァローグたちは穴の中に降りて行った。



 
 
 

ギャリー・トロット(25)

ここまでの「ギャリー・トロット」

 三井麻季はパソコンに届いた不思議なメールを開けた事をきっかけに謎の世界に飛ばされてしまう。
 そこは、凶暴な獣人クー・シーが徘徊する暗闇の世界だった。
 そこで出会った複合企業レプラコーンの調査隊と行動を共にした麻季だったがクー・シーたちに囲まれ籠城戦となる。
 辛くも襲撃を撃退した調査隊だったが麻季は行方不明になる。その後、調査隊は目的の謎の建造物まで辿りついた。爆発物で強引に中に侵入した彼らを新たな脅威が待ち構えていた。
 一方、麻季は、ある部屋に連れて行かれていた。
 麻季を導いたのは同級生の光輝であったが何か様子がおかしかった。不審に思いながらも光輝の話を聞く麻季。
 その頃、調査隊は近代的な設備のある部屋にたどり着いたが……




「一体何があったの?」
 宙に映し出された画像を見ていた麻季が言った。
「あんまり騒がしくするからシュリーカーがやって来た。自業自得だ」
「シェリーカー? なんなの?」
「危険な奴らだよ。バケモノでこの場所を守っている衛兵ってとこ」
「早くみんなを助けないと!」
「残念だけど僕にはどうしようもない。"ここ"にいてはね」
 光輝は肩を竦めた。
「それに麻季が行ってどうなるっていうの? 相手はバケモノなんだよ」
 確かに光輝の言う通りだ。武器を持ったトルートたちに何とかできないものを麻季の手に負えるわけがない。
 考えるんだ……何かいい方法を
「そうだ! ここに連れてくればいいわ。安全なんでしょ?」
「まあ、あんな場所よりはね」
「じゃあ、ここへみんなを連れてきましょうよ! いいでしょ?」
 光輝が考え込む。画面に映る連中の生存率は高くなるが、その代りこの場所が危険に晒されるリスクが生まれる。彼女にその説明を順序立ててする事もできるのだが、麻季の目は、それでも構わないと既に言っていた。
「やれやれ」
 光輝は渋々、麻季の後ろの壁を指差した。
「そこが、あの連中の部屋と通じている通り道だよ」
 壁の一部が開き、通り道ができた。
「早くしよう。急いで連れてくれば何人かは助かるかも……おわっ!」
 光輝は壁の方を指さした。そこには小さいドアがあった。
 麻季は光輝に飛びついた。
「ありがとう、光輝」
 突然の事に光輝は呆気にとられる。
「元の世界に戻ったら、またカラオケいこうね!」
 そう言うと麻季は出入り口に向かって走っていった。
 光輝は麻季を見送りながらため息をついた。
「やれやれ、つくづく予想外の行動をとる人間だ」


 光輝はそう言って頭を掻く。
 その背後の影から誰かが現れた。
「わからんな。何故、あの娘が選ばれたんだ?」
 男は、そう言うと光輝の横に立つ。
 長身で髪は黒くアジア系の男だった。黒いロングコートで身を包み。目から下はフェイス・ベールで覆っている。
「さあね。彼女の遺伝子に聞いてくれ」
 光輝は肩を竦めた。
「どうする?」
「麻季を守ってくれ。あの娘だけがセトを抑え込めるんだ」
「了解した」
 フェイス・ベールの男は、そう答えると再び影の中に消えていった。
 その瞳は金色に光っていた。


 
 

ギャリー・トロット(26)


 スヴァローグが連れ去られた雇い主を追ってから10分が過ぎた頃。
 部屋の中では、不気味な音が鳴り響き始めていた。
 その場に残ったトルートたちはその音を注意深く聞いていた。
「なんの音だろう?」
「発電機がイカれたんじゃないのか?」
「ここまで聞こえるもんか」
 アーチャーは、音の正体を確かめようと壁に近づいた。その時だ!
 壁から誰かが飛び出てきた。
「なんだ!」
 驚いて身を引くアーチャーは、銃口をその誰かに向けた。
「なんだ! おまえ」
 何も返事はなかった。
 そいつは出来の悪い操り人形の様にゆっくりとアーチャーに迫った。その姿は砂利に落としたアイスクリームを人の形にした様だった。
 トルートは危険を感じ、アサルトライフルを構えた。
「アーチャー、伏せろ!」
 5.56㎜弾が容赦なく撃ちこまれた! 不気味な人形は勢いよく吹き飛ばされる。
「トルート。撃つ時は先に言え!」
 頭の横を銃弾がかすめたアーチャーは怒鳴って文句をいった。
「言ったろ。それより何なんだ、こいつ」
 倒れた人形に近づいたトルートは足で蹴飛ばしてみた。
「俺が知るか。博士なら分かるんじゃないのか?」
 だが、アンジェラも見た事はない。あるとしても遊園地のアトラクションでぐらいだろう。
 他の隊員たちも奇妙な"そいつ"を興味深げに眺めていた。
「調べてみるわ」
 アンジェラは倒れた人形を覗きこむ。ペンを近づけ、生き物か機械かを確かめようとした。その時、そいつがいきなり起き上った!
 ゴミの様な細かい物体を飛び散らしてアンジェラに襲いかかった。突然の事にアンジェラは身動きがとれなかった。
 その横からトルートが回し蹴りを浴びせた人形を打倒した! とどめに床に倒れた"そいつ"の頭にナイフを突き立てる。
「大丈夫か?」
 アンジェラを助け起こしたトルートはそう言った。
「ええ、ありがとう……助かったわ」
「何だよ。ほんとうによ!」
 ライフルを構えたアーチャーが吐き捨てるように言った。
「すくなくとも人間じゃないわよ」
 頭を刺されながらも床の上でじたばたと動きまわる"そいつ"をアンジェラが見やった。
 音が大きくなっていく。
「嫌な予感がする」
 そうトルートが呟いた時だ。
 壁から"そいつら"が一斉に姿を現した。


 
 

ギャリー・トロット(27)


 カートドッグスの隊員たちが射撃を始めた。
 迫るバケモノたちに銃弾が浴びせられた。しかし、倒れはするものの再び立ちあがって歩き始めてしまう。
「こいつら、銃がきかねえぞ!」
 アーチャーが嘆いた。
 射撃を続けながらも次第に後退していく隊員たち。
「ここを放棄するぞ! 部屋からでるんだ! 行け! 行け!」
 隊員たちが部屋から飛び出す。
「さあ、早く」
 アーチャーがアンジェラの手を引いて部屋を出た。
 しんがりはトルートが務める。G36Eを撃ちまくってバケモノの足どめをした。全員の退避を確認した後、トルート自身も部屋から出た。手榴弾の置き土産を残して。
 数秒後、爆発起きた! 部屋の出入り口から爆煙が吹き出る。
「一旦、ここから出ようぜ、トルート」
「いや、そう簡単にはいかないみたいだぜ」
 通路に逃げ出したものの、その行く手に同じ種類のバケモノたちの群れが立ちふさがっていた。
「くそが」
「神殿の中で使う言葉じゃねえな」
「くそはくそだ」
 トルートとアーチャーは顔を見合わせた後、再び射撃を開始した。だが、やはりバケモノに致命傷を与える事はできず、その行進を止めるには至らなかった。
「こっちよ! トルート」
 その時、聞き覚えのある声が聞こえた。
「麻季か? どこだ!」
 土煙の中から麻季が現れた。
「おい、お譲ちゃん。いままでどこへ行ってた? この兄ちゃんが心配してたんだぞ」
 アーチャーが冗談か本気なのか分からない口調で言う。
「ごめんなさい。私にもよくわかんなくて……そんな事より、こっちに抜け道があるの。来て!」
「お、おい! 麻季」
 麻季は言うが早いか土煙の収まらない部屋の中へ戻って行った。
「どうする? 」
 アーチャーが言う。
「信じるさ。元々、不思議な娘だ」
 トルートは麻季の後を追って中に入る。アーチャーやアンジェラ、他の隊員たちも後へ続いた。
「こっち、こっち!」
 中に入ると壁にできた通り道から麻季が手招きしている。
「よーし! 博士、みんな、先に行け! 早く!」
 トルートはアンジェラたちを誘導しながら出入り口の横に立つ。
「アーチャー、先頭を行け」
「了解!」
 アーチャーは素早くフラッシュライトを点けるとライフルを構えて抜け道に飛び込んだ。
 後から続いて来たアンジェラが麻季を抱きしめる。少し照れくさくなる麻季。
「また会えて嬉しいわ。麻季」
「わ、私もです。アンジェラさん」
「後で消えた理由を聞かせてね。じゃあ」
 アンジェラはそう言うと、抜け道に入って行った。
「きやがった! 撃て!」
 通路にいたバケモノたちが部屋に侵入してきた。残ったカートドッグの隊員たち数人とトルートはそれを迎え撃つ!
「くたばれ! くそバケモノ!」
 弾丸を装填中のひとりがバケモノに襲われた。叫び声と共に隊員の動きが止まる。
「密集するんだ。こいつらを近づけるな」
 麻季は手を強引に引っ張られて抜け道に放り込まれる。
「先に行け、 麻季!」
「でも……」
「いいから行け。ここは俺たちが食い止める」
「あの……」
「行け!」
「は、はい」
 トルートの気迫に押されて麻季は言う通りに抜け道に入った。
 トルートはそれを横目で見送ると、再び正面の敵に集中する。
「きやがれ、バケモノめ。ここは通さねないぜ」
 かつて……かつて、護れなかった幼い妹の姿がトルートの脳裏に浮かぶ。
 今度は護り切る!
 トルートは心の中でそう叫んでいた。




 
 
 

 

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