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真夜中の占い館で散歩
オリジナル小説の公開です
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人魚姫救出大作戦!⑤

「娘を連れ戻したい?」
 王様は水槽の中で頷いた。
「実は、どこぞの若い男に入れ上げて陸に上がってそれっきりで」
 王様は怒ったのか、水槽の中で手に持った三又の槍を叩きつけた。
「お、落ち着いて、王様。ね?」
「はっ! これはお見苦しい所をお見せした。
 打って変って謙虚になる王様は三又の槍を叩きつけるのをやめた。
「それって駆け落ち?」
「いや、娘の一方的らしく。軽くストーカー状態で」
「それはやばいわね。様は変なマスクを被らないと陸では動きまわれないんでしょ? 娘さんもあんな格好でストーカーを?」
「いや、あんな格好でストーカーしてたらすぐ捕まっちゃうでしょ。その辺はウチの娘は常識あるので」
「常識ねぇ」
「実は裏技を使いまして陸の上でも生活できるようにしたのです。そこが問題なんですけど」
「裏技?」
「海の魔女シーハッグの魔法で人間の足をもらったらしいのです。今頃、陸でも生活できる身体になってるはずです」
「海の魔女。聞いたことあるわね。あんまりいい噂じゃないけど」
「そのとおり。そんな奴の魔法を使って娘が陸に上がったなんて、私も気が気じゃありません」
「その後の足取りは?」
「陸の情報はさすがに入りにくく、行方しれず」
「なら、まずは海の魔女に行方を聞いた方がいいわね」
「私もそう思いましたが……」
「どうしたの?」
「いや、ちょっと怖くて」
「あんた王様でしょ!」
「王様でも怖いものは怖いんですよ!」
「手に持った三又の槍は飾りかい!」
「そうです!」
 王様はきっぱり言った。
「さっきは振り回してたのに」
 キーラは頭を押さえる。
「娘さんが出ていくのがなんかわかるわ……」
「そう言わずに助けてください。私には娘が全てなんです」
「そうは言うけどね……」
「タダとは言いません。娘を連れ戻してくださったら海のリゾートへ1カ月ご招待。ホテル代は私どもが持ちます」
「海のリゾート?」
「エステもありますよー」
 キーラの頭の中に優雅に浜辺で寝そべる自分の姿が浮かんでいた。
「し、しかたないわね。これも人助け……いや人魚助け」
「ありがとうございます!」
「じゃあ、まずは海の魔女の所に行きましょうか」
「良い考えと思いますが、私どもは海の中でも呼吸ができますけど、あなた様は陸のお人。一体どうやって?」
「心配ないわ」


 ここはクラブ・ベーリングの外の浜辺
 キーラと王様とお供のカニ騎士がクラブを抜け出し集まっていた。
「魔法使い様、何をするんですエビ?」
 エビ騎士が不思議そうに小首を傾げる。
「いいから、いいから」
 キーラはそう言うと呪文を唱え始めた。
「水の精霊たちよ。汝らの世界に我を導け! アブロスタリア、キブロスタリア」
 目の前の海辺から水柱が上がったかと思うと何か巨大な物が現れた。
「こ、これは」
 目を丸くする王様たち。
「これなら深海くらいへっちゃらでしょ」
 目の前に現れたのは巨大な……巨大な……
潜水艦?」
 王様は首を傾げた。
「そうでーす!」
「あの……これファンタジーなお話ですよね」
「頭が固いわね。そんな人にファンタジーを語る資格はないわ! もっと柔軟に考えなさい!」
「いや、これに乗り込む私たちの方がファンタジーの登場人物失格の気がしますけど」
「つべこべ言わずに出発するわよ!」
 そう言いながら全員潜水艦に乗り込んだ。
「潜航開始!」
「アイサーエビ」
 いつの間にか乗り込んだカニ騎士が操縦席に座り装置を操作していた。
「(これでよかったのだろうか……)」
 潜航を開始する巨大な潜水艦の中でそうひとり思う王様だった。
「(これは楽でいいエビ♪)」
 そう思いながら潜水艦の操縦を楽しむカニ騎士。
「(ふふふ、この夏は南の島でリゾート三昧ね)」
 そんな事を考え、ふと顔がほころぶキーラ。
 様々な思いを胸にキーラたちは海の魔女の元を目指し海底深く沈んでいくのであった。


 
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ガンダム戦記 白のプラトーン ⑭

 二稿目

 早足で進むアカギを慌てて追いかけるセレナ。
「アカギ怒ってる?」
 アカギの不機嫌さを感じ取ったセレナは横に並ぶと顔をのぞきこんだ。
「もう勝手な事はするな。お前は一応……」
 "捕虜"……そう言いかけた時、アカギはなぜか次の言葉を口にするのに躊躇した。
「一応……そうだな。まあいい」
「ごめんなさい。アカギ」
 素直に謝るセレナにアカギが少し戸惑う。
「それとジュノのした事ってアカギを怒らせたみたいだけど、ジュノは私の為にしてくれたの。だからきっと悪いのは私なんだよ」
 真顔でアカギを見つめながらセレナはそう言った。
 その真剣で正直な態度にアカギは彼女に好感を持つ。同時にアカギは自分に彼女がジオン側であるという感覚がないというのに気がついた。

 それもいいか

 そう思ったアカギは小さくほくそ笑む。
「何が可笑しいの? アカギ」
「いや、別に……それより、さっきの楽しかったか?」
「えっ?」
「楽しかったかって聞いてるんだよ」
「うん。みんな優しかったし、いい人たちね」
 そう、にこりと微笑むセレナにアカギは、怒る気もどこかに失せてしまった。
「じゃあ、もういいよ」
「許してくれるの」
「ああ。そうしておく」
「ほんとに!」
 嬉しそうなセレナに思わずつられてアカギもつい笑顔になる。
「ジュノも?」
「奴は、だめだ」
 アカギの表情が厳しくなる。
「ここにはルールがあるんだ。ジュノはそれを破った。ここで奴を許すとそれを真似する者が出始めて収拾がつかなくなる。だから奴には罰を与える。大目に見るわけにはいかないな」
「そう……」
 アカギの言葉を聞いたセレナの表情が途端に沈む。
 セレナの気持ちはわからないでもないが、ここで部下に甘い顔を見せれば下の連中は必ずナメてきだすだろう。この部隊は、はみ出し者の集まりだ。その傾向は特に強い。力で統制することはアカギも好きなやり方ではなかったがここは締めていかなければいかないところだ。
 幸い有能な軍曹のバンザがいる。処罰のやり方は彼に任せておけば上手くやってくれるはずだった。
「でも、罰は与えるが奴の事が嫌いってわけじゃないんだよ。バンザ軍曹もあいつの事は好きなんだ。だからセレナが思ってる程、酷い事しないから心配するな」
「そうなの?」
「セレナ」
「は、はい?」
「似合ってるな、その連邦の格好」
「そうかしら?」
 セレナは嬉しそうに服を整える仕草をした。
( こいつが、゛中尉"だって? まったくなんて大嘘だ…… )
 アカギはさっきの騒動の事を思い出すと、つい可笑しくて笑わずにはいられなかった。


 
 

ガンダム戦記 白のプラトーン ⑮

5、疑惑

3稿目

 第501補給基地に辿り着いた街の顔役パパは、ベットに寝かされ衛生兵の治療を受けていた。
 頭に包帯を巻かれベッドに横たわっているが意識は無い。
「何があった? ドク」
 治療を終え手を拭く衛生兵に問いかけた。
「何かの爆破に巻き込まれたらしいです。軽い火傷と打撲、頭を打ってるみたいだから少し様子を見たほうがいいかも」
「爆発? 何の爆発だ?」
「そいつは俺よりそっちの方に聞いたほうがいい」
 ドクはアカギの後ろを指差した。
 そこには連邦軍の士官の制服を着た男が腕を組みながら壁に寄りかかっていた。
「あんたは?」
 男はアカギと目が合うと軽く敬礼してきた。
「ロブ・マッカラム中尉。コールサインは"ホッパー"。ミデアの機長をしている」
 そう言ってマッカラムはにやりと笑う。
「ミデアの?」
 なんで、こいつがここにいるんだ? アカギはそう思っていた。
「大した怪我はなかったようですね。中尉」
 平静を装い静かにそう言うアカギ。内心はこの部外者をどうあしらうか考えていた。
「おかげさまでね。白いモビルスーツのおかげで命拾いした。あれは君だろ? 少尉」
 アカギは肩をすくめた。
「礼をいうよ。あの英雄的行動には尊敬に値する。だがわけのわからん注射だけは、いただけんがね」
「治療の為でしょ? 自分は医療処置には疎いもので衛生兵に任せていますので」
「そうか? 俺はてっきり、あの変な注射は君の指示かと思っていたよ」
 アカギはその言葉を無視した。
「まあ、何はともあれ、俺たちは君らに助けられた。借りはあると思っている」
「それはどうも」
 マッカラムのアカギを見る目が鋭くなる。
「中尉、少し聞きたいことがあるんですがね」
「俺も少し聞きたいことはあるが、君からお先にどうぞ」
「どうも」
 アカギは机によりかかると切り出した。
「俺が聞きたいのはあんたちのミデアで護送してきたあのジオンのことです」
「その事か。残念だが俺もよく知らないんだ。元々俺たちはキエフからの定期輸送だったんだ。あのジオンの少女と情報部の少佐が予告もなしに乗り込んできた。正式な命令書があったから特に気にしなかったけどな」
「では、あんたは、あの少女の正体も知らないわけだ」
「そういうことだ。こんどはこっちが質問する番だが」
 アカギは、どうぞと無言で頷いた。
「お前たちはここで何してる? 俺も輸送部隊の端くれだ。補給基地への出入りも何度もある。しかしここは、どうも様子が妙だね」
「何してるって……たまにやって来る友軍への物資補給ですよ」
「本当にそれだけかい? 少尉」
「それだけです…・・・」
「まあいいさ。俺と俺のクルーは君に助けられた。その借りと返そう」
「具体的には何を?」
「黙っていてやる。それだけだ」
 マッカラムは表情も変えずにそう言った。
 彼は、アカギたちの副業に気付いているのは間違いなさそうだ。同時にアカギはこのミデアの機長の洞察力が侮れないと悟っていた。

 この男、仲間に引き込むか……

 アカギが迷いっていた時だった。マッカラムが切り出した。
「それともうひとつ返したい。ベッドに寝かされているその民間人はモビルスーツの攻撃を受けた」
 アカギはマッカラム中尉の言葉に耳を疑った。
「この地域のジオンは撤退したはずだ。戦線はもっと北の筈でしょう」
「でも俺も見たんだよ。あれはジオンのMS-06ザクだった」
 アカギは考え込んだ。
 ジオンの反撃が始まったっていうのか?
「どうする? 少尉」
 マッカラムがいじわるそうに聞いてきた。
「付近にいる部隊と連絡を取ります」
「濃度が上がっているミノフスキー粒子のせいで通信は不通だろ? 通信はできないぞ」
「では通信圏までヘリを飛ばすまでです」
「ヘリがあるのか? なら、さっそく準備した方がいい」
「その前に……」
 アカギはドクの顔を見た。
「さてと。自分は気分転換に外の空気を吸ってきます」
 アカギのアイコンタクトを察したドクは、そう言うと部屋を出た。
 まったく、何をするつもりなのか……
 ドクが部屋の外に出た時だった。部屋の前に連邦の女性士官の格好をしたセレナが立っていた。
 見覚えのない士官にドクは一瞬驚いた。
「誰だ? あんた」
「アカギに、ここで待ってるように言われました」
 そう言ってセレナは微笑んだ。



 
 

ギャリー・トロット (22)

 
 強烈な照明がクレーターの底を照らした。
 数人がロープを伝いそれを目指して降りていく。
 それ離れた岩場がら見下ろす者がいた。
 黒い獣クー・シーの群れに囲まれた者は、獣ではなく人の姿をしていた。
 黒いロングコートを羽織り、顔立ちは明らかに東洋系だった。
「とうとう見つけちまったか」
 男は、そう呟く。
「さて、こうなっては我らの姫君はどうしたものかね……」
 傍らで静かに伏せるクー・シーの背を撫でた。


 下にたどり着いたトルートは、気配を感じ上に視線をやった。
「どうした?」
 アーチャーが声をかける。
「いや、何かいた気がしたんだが」
「どこに?」
 アーチャーは、トルートの見つめる方向を照準スコープで覗いてみたが何もいない。
「誰もいないぜ」
「すまん。気のせいだ」
 トルートは、アサルトライフルを構え直した。
「しかし、近くで見ると改めてデカイもんだな」
 アーチャーが謎の人工物を見上げて言う。
 その時、丘の上から新たなライトが照らされる。
「もう一台?」
 別のブラッドレー戦闘車両が現れた。
 アンジェラが立ち上がりクレーターの丘を見上げた。
「聞いてない」
 
 ブラッドレーから顔を出したのはアンジェラの見覚えのある人間だった。
「知ってる奴かい?」
 アンジェラの表情に気がついたトルートが尋ねる。
「ええ」
 アンジェラは、不機嫌そうに言う。
「何もかも台無しにする奴よ」
「はぁ?」
「レプラコーン社のプロジェクト責任者。私の雇い主」
 トルートは、改めて男の方を見た。器用にロープを伝い降りてくる最中だ。
 行動的な奴だな
 トルートは思った。

「これか」
 建造物の前に立った時、男は満足げに言った。
 近づいてきたアンジェラが愛想笑いを浮かべる。
「ようこそ、ミスター・クロフォード」
「ドクターアンジェラ御苦労だった」
「私の仕事は中に入ってからですよ」
「そうだったな。しかし……」
 クロフォードは建物を見渡した。
「あれが入口じゃないか?」
「ええ、形状から察するにその様ではありますけど、確定はできません」
「明かないのかね?」
「仕組みを理解しないと容易には開けられないでしょう」
「難しいな」
「壁の文字は古代シュメールの文字によく似ています。スキャンした画像をパソコンのデータベースと照合して、それから……」
 そう言ってる間にクロフォードは傭兵たちに合図した。
「爆破しろ。その方が早い」
「何を言ってるんですか? この発見は重大な」
「ドクター。わが社にとって重大なのは入口ではない。中身だ。やれ」
 仕掛けられたC4火薬が点火された。
 暗闇の中が一斉に明るくなる。
 トルートは爆炎に照らされた建造物の全様を目にしていた。
 それは、わずかな照明で照らされていた部分より遥かに巨大で生物的だった。
 改めて目の前の驚異に目を見張る隊員たち。


 そして光は、闇の隅々まで届いた。
 そして眠っていたモノを呼び覚ましていた。



 
 

ガンダム戦記 白のプラトーン ⑯

四稿目

 通信圏に向かう為、へリに久しぶりに火が入れられた。
「いいか! 通信ができるようになったらさっきの事を至急打診しろ! わかったな!」
 ヘリの回転するブレードの音にかき消されそうになりながらバンザはパイロットに言った。
「援軍要請ですね! 了解です。軍曹!」
「頼むぞ」
「任してください」
 バンザが離れるとヘリはゆっくりと浮上していった。
 20メートル程の高さまでくると基地の外に向かって飛んでいった。
 が、ヘリが基地から百メートルほど進んだ時だ!
 ミサイルが白い白煙で空中に線を描きながらまっすぐヘリに向かっていく。
「何んだ?」
 パイロットが気付いた時には手遅れだった。回避の為の旋回は間に合わない。
 爆発音が基地全体に響きわたった!
 直撃を受けたヘリは空中で爆発、墜落していく。破片と炎がバンザの頭に振ってくる。
「Shit!」
 バンザは双眼鏡でミサイルの発射源を見つけようと周囲を見渡した。
 あれか?
 見つけたのは緑色をしたジオンの"一つ目"の巨人。
 MS-06ザクだ
「ザクだと! なんだってこんな所にジオンが」
 さらに岩場から2機のザクが姿を現した。
「敵襲! 戦闘準備だ! てめえら!」
 城壁の上からバンザが恐ろしく大きな声で怒鳴った!
 サイレンがけたたましく鳴り響く!
 兵士たちがヘルメットとアーマースーツを抱えて銃器庫へ向かった。手渡されていくアサルトライフル。
 アカギは簡易司令室としている部屋に駆け込んだ。机に並べたノート型のパソコンを起動していく。
「すみません! 少尉!」
 遅れてきたジュノと他のオペレーター担当が席についた。
「それから……さっきもすいません」
「もうそれはいい。集中しろ」
「わ、わかりました」
 ジュノは焦りながらフェッドフォンマイクをつけた。
 正面のマルチスクリーンに基地周辺に設置されたカメラからの画像が映し出されていく。
 隣にあるもう1つのスクリーンには基地周辺を平面化した画像が映し出された。そこには2つの光点が基地に向かって移動していた。MS-06Fと指し示す文字が一緒に表示されている。
「報告しろ!」
 アカギはフリーハンズマイクをかけると大声でそう言った。
「敵確認! MS-06ザクⅡ、2機接近! 現在の所、兵装未確認です」
「防衛システム作動中。敵、防衛フィールドまで距離170!」
 オペレータから次々と状況が報告される。
「ジムは!」
「パイロット搭乗まだです。急速暖機中!」
「急がせろ」
「了解!」
 整備庫にある二機の"人型"にパイロットが乗り込んでいった!
 ヘルメットを被るとRGM-79ジムの起動スイッチを入れた。正面のスクリーンに外部映像が映し出される。
「ジム"ブッチャー1"スタックス、出ます」
『敵はモビルスーツだが機種、数とも不明だ』
「了解です。ところで少尉。今日はジムには乗らないんで? 」
『指揮官が先頭きっっちまったら誰が部隊を指揮するってんだ? お前のジムは別の機会に借りるよ、スタックス』
「そりゃそうですな! ははは!」
 アカギの言葉にパイロットは大笑いした。
 タスケ・アカギは元々、モビルスーツのパイロットではない。
 専門の訓練も受けていなかった。空いた時間に興味本位でRGM-79ジムの操縦を覚え、たまに周辺を偵察任務と称し"遊んで"いた。
 ジム一番機"ブッチャー1"は本来、サミー・スタックス上級曹長の機体だったが上官の"お遊び"の為に愛機を貸していた。
 同時にスタックスはアカギの"MSの現地教官"となる。
 だが彼が驚いたのはアカギの"適正"だった。
 戦闘機もモビルスーツにしても誰にでも乗れるものではない。例え動かせたとしても操縦は行き着くところパイロットのセンスだ。
 MSの操縦感覚に関して言えばアカギは専門訓練を受けるパイロット候補生たちよりも各段に素質がある。
 多分、あの少尉の方が俺より"ジム"を上手く使いこなすだろうにな。
 そんなことを考えながらスタックスはレバーアクセルを開けた。
 連動して胸の排気口からガスが吹き出る。
 歩き出したジムが整備ベッドから離れていった。
「ジム"ブッチャー2"スパロー、出ます!」
 暖気を終えたもう一機のジムが歩き始める。
 足元の整備兵が手を振った。
「おい! ビームライフルの整備が終わったぜ! 持ってくか!」
「時間がネエ! スプレーガンでいく!」
 二機のジムは稼働音を響かせながら基地のゲートに向かう。
 ゲートの外には暗闇が不気味に広がっていた。


 
 

ガンダム戦記 白のプラトーン ⑰

「ブッチャー1、2、 出撃します!
「ブッチャー3は?」
「ミデアの物資回収から、まだ帰還してません」
「連絡いれたか?」
「入れました。けど、応答はなくて」別のオペレーターが答えた。
 ミノフのせいか? それとも既にやられたってのかよ
「コールは出したままにしとけ」
「わかりました」
「ブッチャー小隊に敵位置を送ってやれ」
「解析中! あと20秒待って!」
「早く送ってやれよ! ジュノ」
「りょ、了解!」
 コンピューターの情報解析が終了するとデータがジムに送信されていった。
 ミノフの妨害を受けながらも、なんとかコマンドルームからのデータを受信したジムのコンピュータは数秒でスクリーンに地形と敵位置が表示した。
「正面に2機か……軍曹。そこから確認できるか?」
 アカギが聞くとすぐに画面に動きがありザクの映像が拡大された。それは迎撃の為に、展開しているバンザ軍曹のヘルメットに取り付けられたカメラからの映像だ。
『見えますか? アカギ少尉』
「見える。すまん」
『いえ。少尉』
 画像の中に大き目の岩に身を潜めながら様子を伺っているジオンの"一つ目"が見えた。
「ザクの動きが止まったな。こちらの様子を伺ってるのか?」
『こちらの戦力が予想外だったのかもしれませんよ』
バンザはノイズ混じりの通信越しにそう言った。
『こちらブッチャー1、ザク確認! 命令を!』
 新たな通信が入る。
「狙撃できる位置か?」
『射程外ですがもう少し接近すれば』
「バンザ! MIM(単発の携帯用対モビルスーツミサイル)で援護だ」
『了解』
「ブッチャー1、ブッチャー2、敵の動きは不自然だ。深追いはするな」
『了解! 少尉』
「よし、攻撃開始しろ!」
『了解! ブッチャー1行きます! ブッチャー2、援護を』
『了解、ブッチャー1』
 ジムが赤いシールドで機体を覆うように構えながら全身を始めた。寮機のジムが岩場からビームガンを構えながら姿を出す。
 そのジムの姿を確認したザクがマシンガンによる銃撃を始めた。ジムのシールドに大口径の炸裂弾を弾き返す。ザクの攻撃を弾き返しながら前進続けた。
「ブッチャー小隊! 前進します!」
 スクリーンにジムを表示した光点が移動を始める。
「ザク! 後退!」
 アカギはその様子を見て何か違和感を感じていた。
「バンザ、何かおかしなとこはないか?」
『いえ、ザクは後退してるようですが特に』
「そうか」
 ジムの放ったビームがザクの右肩のシールドを吹き飛ばした!
「よし!」 スタックスはそう呟く。
 勢いに乗ったブッチャー小隊はさらに前進する。
「おいおい、人間の足を考えてくれよ」
 バンザが舌打ちしてそう言った。
『少尉、ジムの足が速すぎます。部隊が追いつけません』
 根を上げたバンザがコマンドルームに通信を入れた。
 画面上ではバンザの部隊を示すマークととジムを示すマークの距離が離れ始めた。
「MIMの射程限に入り込めればいい。なんとか追いついてくれ、軍曹」
 その時、ザクの位置を示す光点が止まった。
「敵の動きが止まりました」ジュノが報告する。
「ブッチャー1、バンザ、敵が止まった。射撃警戒だ」
 その時だ。
「あ?」
 ジュノは画面の見て目を丸くした。敵の識別を示す多数のマーカーが一斉に現れたのだ」
「しょ、少尉! 敵、増援です!」ジュノが慌てて声を上げる。
「罠だ! ブッチャー1後退だ! 後退!」
『……なんです? 少尉、ミノフのせいでよく聞き取れ……せんが』
「下がれ! スタックス! そいつは敵の罠だ!」
 危険を察知したアカギの警告はジム小隊には届かなかった。
 スクリーンの画面に次々とエネミーマーカーが増えていく!
「こ、こいつら!」
 雪原にカモフラージュさせた大型の白いシートが跳ね除けられるとそこから新手のザクが姿を現していった。
 特殊繊維のカモフラージュシートはザクの熱源と金属反応さえも覆い隠していたのだ!
「しまった!」
 ジムの周りを囲んだMS-06ザクの部隊は一斉射撃を開始した!
「スタックス!」
 アカギの叫びが指揮室内に響いた!
 ジムの周りを囲んだMS-06ザクの部隊は一斉射撃を開始した!
 120㎜マシンガンが集中砲火される。
 「スタックス! さがれ!」
 アカギの叫びが指揮室内に響いた!
 集中砲火を浴びるジムは貫通力の低いM-120A1 型マシンガンの120mm弾をシールドで辛うじて防いだ。
「スパロー! 後ろにつけ!」
 2機のジムはシールドをたてながら背中合わせになり防御体制をとる。
「やらせるかよ!」
 スタックスは必死の反撃を試みた。
 ビームガンを包囲するザクの群れに撃ちまくる。
「ジム! 孤立しました!」
 ジュノがアカギに状況報告をする。
「バンザ! ジムを援護できるか?」
 バンザのカメラの映像が大きく揺れていた。こちらもほぼ同時に戦闘に突入していたのだ。
 迂闊だった!
 アカギは自らの采配を後悔した。
『"ひとつ目"が邪魔で……くそっ!』
 バンザ隊の前に一機のザクが立ち塞がっていた。対人用に機銃を装備したザクはバンザたちに掃射を続けた。
「くらえ!」
 対MSミサイルを構えたバンザは岩場から飛び出た!
 レーザーロックされたザクにミサイルが発射される。ロックに気付いたザクは右肩のシールドを向けた。ミサイルはシールドの端に当たり爆発した。直撃を避けたザクは爆炎の中、120mmザクマシンガンを下に向けるとバンザたちに撃ってきた。岩場が消し飛んでいく。
「こちら、バンザ! これ以上の接近は無理です!」
 やはりモビルスーツ相手に人間では限界があるか……
 アカギは歯軋りした。
「他に何か手は……」
 マルチスクリーンを見つめたアカギはある画面に目に入った。
「ジュノ! そのノートパソコンを持ってついてこい」
「え? りょ、了解!」
 ジュノを従えたアカギは指揮所から飛び出していった。

 
 

ガンダム戦記 白のプラトーン ⑱

 ビームライフルを乗せたトーレーラーに乗り込んだアカギはバックでゲートに下がっていった。
 直前にまで下がったトレーラーを停めると荷台のライフルに駆け上った。ライフルの先端にトラック用のジャッキを当てるとハンドルを回すと銃口を持ち上げ始める。
「ジュノ! ライフルの照準にそいつ、直結できるか?」
 アカギはジュノの抱えるノートパソコンを指差した。
「で、できると思いますが……でも、何をする気で?」
「このビームライフルでザクを狙撃するんだよ! その為にレーザーサイトと直結してそこから狙いをつける」
「ああ、なるほど」
「すぐやれ!」
「りょ、了解!」
 アカギはフリーハンズマイクをつけるとスイッチを入れる。
「こちらアカギだ。合図をしたらゲートを開けろ!」


 ゲートの外では罠にはまったジム小隊が苦戦を強いられていた。
 直撃弾を受けたブッチャー2の右肩が吹き飛ぶ!
 ビームガンを握ったままのジムの腕がが雪の積もる大地に落ちて転がった。
「やられた! もう駄目だ」
「諦めるな! このまま後退する。シールドは捨てるなよ」
「でも」
「諦めるなと言っている! 俺についてこい!」
「りょ、了解」
 2機のジムは後退し始めたが120mm弾の攻撃は激しくなるばかりだった。
 くそが!
 その時、目の前のザクをビームの閃光が貫いた!
 淡い赤色のビーム光がジムの機体を照らした。
「な、なんだ?」
 放たれた方向にメインカメラを向けるとトレーラーが見えた。
「おいおい、なにしようってんだ」
 カメラをズームアップするとトレーラーに積まれたビームライフルが第二弾を発射するところだった。
「うそだろ?」
 メガ粒子ビームがもう一機のザクの頭部を吹き飛ばす!
『聞こえるか! スタックス!』
「少尉? アカギ少尉ですか?」
『援護する。その隙に後退しろ!』
「了解です。感謝します、少尉」
『そいつはここまで来たら聞くよ』
 ビームライフルからは強力なメガ粒子ビームが連射された。巨大な岩を砕き、当たればMSといえども破壊するそのエネルギーにザク隊は足を止めた。
「次! チョイ左!」
 ビームライフルの照準から見える映像がパソコンの画面に映し出される。ジュノはライフルの銃身に位置を先端のアカギに指示した。アカギはジャッキと備え付けのウインチを駆使して微妙に銃口をコントロールした。
「そこです! 少尉!」
「よし、撃て!」
 アカギの掛け声と共にジュノは発射キーを押した。周囲を大きく照らしてピンク色の光線が敵に放たれた。光線は、ザクの足元で爆発した。爆炎の中、後ずさりするザクは後退するジムの追撃を阻まれていた。
「よし! いいぞ」
 スタックスのジムは寮機をかばいながらゲート付近まで近づいた。
「もう少しだ。スパロー」
「おう!」
 その時、ザクバズーカーのロケット弾がシールドを直撃した!
 オレンジの炎がジムの前に広がる。衝撃で足元が地面に沈み込む。さらにまずいことに連続した攻撃で強度の落ちていたシールドは持ち強烈な衝撃に耐え切れず二つに割れてしまう!
「しまった!」
 ザク・バズーカの弾丸が再びジム目がけて発射された。
「ちぃっ!」
 頭部のバルカン砲で狙撃を試みるが間に合わなかった。
 やられる!
 残ったシールドの一部をコクピットの前に突き出した。ジムの上半身がオレンジの爆炎に包まれた!
「やろう!」
 ビームライフルがバズーカを構えるザクに向かって連射された。しかしザクは背中のロケットパックを噴射させると数
百メートル後方に飛び去っていった。
 煙が薄れると原型をとどめるジムの姿が見えた。
 アカギはジムを見上げた。
「スタックス! ブッチャー1! 大丈夫か?」
 応答はなかった。
 ジムの姿が確認できたころその18mを越える巨大な金属の塊は大地に倒れていく。
 その機体が地面に触れると同時に土煙が上がった。
「スタックス!」
 コクピットの装甲の一部が吹き飛んでいるのが見えた。アカギはジムの機体をよじ登った。コクピットまで辿り着くと破壊された装甲の隙間から中を覗き込み呼びかけた。
「生きてるか!」
 アカギは外れかけていたジムのキャノピーを引き剥がす。外の光がコクピットの中を照らした。
 中にはパイロットのスタックスが血まみれで横たわっていた。
「へへへ、ドジっちまいましたよ、少尉」
 スタックス曹長は血を流しながらニヤリと笑った。


 
 
 

 

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