真夜中の占い館で散歩
オリジナル小説の公開です
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ギャリート・ロット ⑱


老子は眠りに落ちて自分が蝶になった夢を見た。
目が覚めると彼は思った。
「私は蝶になった夢を見ていた人間なのだろうか? それとも、人間になった夢を見ている蝶なのだろうか?」

老子(紀元前5世紀頃



「一体、ここどこ!」
 麻季はヒステリックに怒鳴った。
「まあ、まあ、落ち着いて」
 麻季とは対照的に光輝は呑気にそう言った。
「だって、底見えないじゃん!」
「かもしれないけど」
「かもしれないじゃないよ! 光輝は呑気ね!」
「けど、考えてもみなよ。ここにいればクー・シーたちに襲われる事もないし、物騒な連中と一緒にいる事もない」
 そう言って光輝は肩を竦める。
「物騒なって……トルートたちの事を言ってる?」
「ああ、すぐ銃を撃ちまくる奴らはキライさ」
 確かに麻季もあの耳に響く銃声は好きになれない。だが……
「他の人たちは知らないけどトルートは、いい人よ」
「いい人?」
「うん。私にやさしくしてくれた」
 光輝は眉をしかめると背中を向けた。
「ねえ、ここは本当にどこなの? 光輝、知ってるわけ?」
 光輝は壁に寄りかかった。
「ここは歴史を刻んだ場所。かつて起こった事を記録している」
「記録……」
 麻季は辺りを見回したが、見えるのは石の壁だけだ。
「ああ、記録は壁に刻んであるのさ」
 光輝の言葉に麻季は興味深げに壁に顔を近づけた。
「確かに何か刻まれてるけど」
「よく見てごらん。麻季には分かる筈だよ」
 言われた通り麻季は壁の文字を見つめた。
 光輝の言うとおり読めた。それだけではない。書かれている事も十分に理解できた。
 最初の遺跡でも同じだった。何故、そうなのか麻季には理由が解らなかった。
「あ……」
 さらに不思議な事に、目の前の様子が突然変わった。
 現れたのは見覚えのない都市だった。
「何なの? これ」
「この世界を造った人たちの世界さ」
 いつの間にか横に立っていた光輝がそう言う。
「どこの街?」
「どこの? ああ、そうだね……今から五千年くらい前かな」
「5千年前に? 嘘でしょ? 見てよ。あのビルにはアンテナがある」
「君たちは、4千年くらい前が文明の起源と思ってるよね。だけど、歴史のほんの隙間に優れたテクノロジーを持った世界もあったんだ」
「まるでSF」
「知ってるかい? 人が動力機関を使って空を飛んでから百年も立たずに宇宙へ飛び出したんだぜ」
「そう言われてみればそうだけど……でも、こんなの聞いたことない」
「思っている程、文明が発展するのに時間は掛らないってことさ。ほんの少しの時間があれば十分」
 光輝は指で摘まむ仕草をして見せた。
「そして、ほんの少しのきっかけ」
 画面が変わった。
 何かの発電所らしい場所だった。
「ここでは、大量のエネルギーを手に入れるのがどの文明より早かった。そこから急激に文明が発達したんだ」
 しかし、何かが起こった。
 巨大な機械から放電が始まっていた。何かが異変を起こしたらしい。
「どうしたの?」
「システムの一部が異常を起こした。エネルギー発生装置が暴走を始めた。やがてこの街は、吹き飛ぶ」
 光輝の言を合図に、街に異変が起き始めた。
「吹き飛ぶって……爆発するの?」
「心配ない。これは過去の映像さ。僕たちには何も影響しないよ」
 そうは言われても周囲の状況は不安にならずにいられない。
「わ、わかったわ。これって過去の映像なのね。でも一体、なんでこんな事が?」
 麻季の問いに光輝の表情が硬くなる。
「それは、ある存在のせいさ」
「存在って?」
「セト……」
 光輝の顔が険しくなる。
「この滅びた世界を支配していた邪悪な存在だよ」

 
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ガンダム戦記 白のプラトーン ⑨

 5稿目

 倉庫に閉じ込められた連邦軍情報部のギムリ少佐は物資の箱を物色していた。
 何か脱出の道具になるものか探していたのだ。
「くそっ! 何か残しておけってんだよ」
 ギムリは、苛立ち紛れに空き箱を蹴飛ばす。
 空き缶がドアにぶつかると同時にの鍵が開く音がした。
 ドアが開くとバンザとアカギが立っていた。
「おいおい、ずいぶん散かしたな」
 仁王立ちしているバンザがギムリをにらみつける。焦るギムリは後ずさりする。
 実のところギムリはこの軍曹に苦手意識を持っていた。
「おい、お前」
 アカギがバンザの前に出た。
 こいつも気に入らない。
 ギムリは思った。
「知ってることを全部話してもらおうか」
「私は君より階級が上だぞ! 早くこの無礼な状況を改善したまえ!」
「そいつは、あんたのスパイ容疑が晴れてからだ。本当に少佐なのかもわからんしな」
「司令部に照会すればいい」
「生憎、数時間前からミノフスキー粒子が濃くなってね。現在、司令部との交信は不可能だ」
「そんな出来過ぎの嘘をつくな。私を勾留する方便だろう」
 ギムリはアカギの話を信用してないようだった。
「いや、本当のことさ。この事は俺たちも不審に思っているんだ。あんた、何か知ってないか?」
「何?」
「ミノフの異常増加はミデアが接近するとほぼ同時。気になった俺が索敵に出た途端、あんたらの乗ったミデアと遭遇さ。いいタイミングだと思わないか?」
「連邦軍機を見つけたんだ。ミノフスキー粒子の散布は当然の戦術だろ」
「ここは連邦軍勢力下なんだ。机上の作戦しかしらんあんたらのような人間にはわからんだろうが、ドップがたった二機で侵入してくるのは決死隊ってことだ。その目的がミデアの追跡だけの為にか? 不自然だね」
 そう言ってアカギは肩を竦めた。
「あのミデアには何があるんだろ? 少佐殿」
「それが軍の作戦というものさ」
「俺たちは自分の身を守りたい。知りもしない事情で危険をさらすのはやだね」
 ギムリは考え込んだ。
 この少尉は少し生意気で反抗的ではあるが頭は回るようだ。上手く利用できればいい駒になるかもしれない。
「協力してくれるなら状況を話すよ。少尉」
 アカギとバンザは顔を見合わせた。バンザは軽く相槌をうった。いい駆け引きだ。アカギもそれに頷いた。
「確約はできない。内容による」




 その頃、部屋に待たされていたセレナは退屈そうに部屋を見渡した。
 無作法ではあるが部屋の中を散策。小さな冒険だ。
 積み上げられた箱の中にはアルコールや煙草。如何わしい雑誌が入っていた。机の上には何冊か本が置かれていた。読んだ事はないが哲学書の類だ。あの少尉は意外とインテリなのかもしれない。
 本をとってめくってみる。
 その時、しおり代わりに使っていた何かが落ちた。セレナはそれを拾い上げた。

 写真?

 そこに写っていたのはアカギを真ん中に両側に小さな子供たちだった。左は男の子で右が女の子。よく見ると目元がアカギに似ている。恐らく兄弟だろう。
 そしてセレナが意外に感じたのはアカギの表情だった。今まで接していた限り、無表情の印象が強かったアカギが写真の中の彼は満面の笑みだった。

 本当はこんな笑顔のできる人なんだ……

 その時、背後から物音がした!
 慌ててセレナは写真を本に挟むと机に戻した。
「少尉、いますかぁ?」
 部屋の中に入って来たのは若い連邦の兵士だった。東洋系のような顔立ちで背は高く人の良さそうな顔つきだ。
「少尉? 」
 部屋を見渡していた兵士は、中にいたセレナと目が合った。
「ジ、ジ、ジオンが!」
 ジオンの軍服を見て慌てる兵士にセレナは気まずそうに微笑んだ。


 
 

ギャリー・トロット ⑲


「地上には、これと並ぶものなく、これは、恐れのない者に造られた。
これは、全ての高き者を蔑み、全ての驕り尊大な者の王である。」


ヨブ記41章33節、34節




「冗談じゃない!」
 トルートは上官であるスヴァローグに喰ってかかった。
「あの娘を見捨てるってのか」
「よく考えろ。トルート。我々は会社と契約したクライアントを守る為にいる。素性もしれない日本人の為じゃない」
 遺跡の中で見失った麻季の事だ。
「だからといって放っておけないですよ。まだ子供だ」
「関係ない」
 スヴァローグはきっぱりと言った。
「あの日本人が我々と契約してるわけじゃない。そんな事にお前は仲間の命を危険に晒すのか?」
 トルートは言葉に詰まった。
「お前は、カート・ドッグスの隊員だ。民間軍事警備会社ブラックリバー社の社員なんだ。その辺を思い出す事だ」
 トルートは反論しなかったが不服顔だ。
「ロシアにはこんなことわざがある "バカのために法律が書かれたわけではない"」
「どういう意味です?」
「愚か者の勝手な行動には注意しろって事だ」
 スヴァローグは話を切ってその場から離れた。
「愚か者はどっちだよ」
 トルートは吐き捨てるようにそう言った。
 その肩をアーチャーが叩く。
「子供を見捨てるのは俺も気が進まないが、隊長の言う事も一理ある。だろ?」
「わかってるさ。だが……」
「考えてみろ。俺たちが、あり得ないくらいの電力を使ってようやくやって来る事ができた場所なんだぜ。そんな所にあの娘はどうやって来た? 変だぜ。あの娘は怪しい」
「ああ、そうだな」
「とにかく今は任務に集中しようぜ。なあ、相棒」
 アーチャーはそう言って片目を瞑ってみせた。


 M2歩兵戦闘車ブラッドレーに黒いボディバッグが運び込まれた。
 それをアンジェラが横目で見送る。
「ブラック・リバーのデラク軍曹です」
 ブラッドレーから降りてきた男がアンジェラに挨拶した。
「装甲車を送り込むなんて会社も凄い事するわね」
「テスト用の転送パックを緊急使用しました。パイク少佐の判断です」
 クリストファー・パイクとは一、二度会った事がある。ブラック・リバー社の派遣した軍事アドバイザーでイギリス陸軍特殊部隊出身の男だ。有能な戦略家と聞いていたが、外見の印象は、愛想のいいセールスマンといった感じだった。その男が自分たちを救う為に"ギャンブル"をやってのけたのだ。
「我々は、障害の排除後は、あなたの任務に協力する様に命令を受けています」
 障害とはアンジェラたちを襲ったクー・シーの群れの事だ。
「ありがとう。目標は遠くない。そこまでの護衛をお願いします」
「了解。では、スヴァローグと打ち合わせを」
「お任せします。あなた方の専門分野ですから」
 デラクは頷くとスヴァローグの方に向った。
 その場に残されたアンジェラは探査装置を取りだすと宙にかざす。装置のディスプレイに三次元映像が映し出され、目標の場所を指し示す。
 "あれ"は、すぐそこにある。
 アンジェラは思った。

 
 

ギャリー・トロット ⑳

 僅かな光の中、2台のM2歩兵戦闘車ブラッドレーが並んで進んでいた。
「速度を落として。近づいてるわ」
 アンジェラは、そう言うと手に持った装置を操作した。
 結局、トルートの意見は通らず、チームは、本来の目的であるアンジェラ・ノイマン博士を目的の場所まで護衛するという役割を続ける事になった。無論、トルートは不服なままだ。戦闘車の中では、口数少ないままだった。

 戦闘車は、速度を落とすとM242ブッシュマスターの取り付けてある上部ハッチからスヴァローグは、周辺を見渡す。
 暗い大地は、遠くまでは見えない。スヴァローグは、暗視ゴーグルを被ると再び周辺を見渡す。
 視界に入ったのは低い丘だった。違和感を感じたのは、他の地形と多少異なる事だ。
「あれなのか……」
 スヴァローグは、呟いた。
 車内では、軽傷を負ったカート・ドッグスの隊員たちが治療を受けていた。
 無傷の隊員たちは弾薬の補給や武器の点検をしている。
「なあ、トルー。思うんだが」
 狙撃ライフルの点検を終えたアーチャーが声をかける。
「最初から、この装甲車で乗り込めばよかったんじゃねえのか?」
 弾丸のカートリッジをアーマーベストのポケットに詰めていたトルートは、肩をすくめた。
「車両を積んだ転送カプセルを使ったのは、まだテスト中だとさ。救援の為にぶっつけ本番で装置を使ったって言ってたぜ」
「なるほど、色々苦労してくれたってわけね」
「そういう事だ」
 トルートは補給を終えた。

「止めて!」
 アンジェラは、興奮気味で言った。
 2台のM2ブラッドレーは、急停車する。
「降りるわ! ハッチを開けて」
 後部ハッチが開く。
「おっと、待った」
 トルートがアンジェラを制するとアサルトライフルを構えて先に降りた。アーチャーも同じく周囲を警戒しながら降りた。
「いいぜ」
 周囲の安全を確認したトルートは、首をくいっと動かした。それを合図にアンジェラは後部ハッチから降りる。
「おい、待てよ。博士」
 アンジェラは、トルートたちを追いこして先に走り出す。無視してどんどん丘を駆け上がるアンジェラにトルートは、諦めて彼女を追った。
 アンジェラは、丘に立っていた。
「科学者は、怪物たちが出る可能性は、考えないのか? 博士」
 トルートの皮肉にもアンジェラは、聞こえない様に立ちつくしていた。
「聞こえてるのかい?」
「ついに見つけた」
「なに?」
「これを探してたのよ」
 アンジェラの視線の先を観たトルートは、目を疑った。
「なんだ、これは?」
 丘と思っていたのは、巨大なクレーターの端だった。その中央には、巨大な人工物が埋まっていた。
 M2ブラッドレーのライトがそれを照らすとさらに鮮明に姿が見えた。
 外観は、トルートが目にしてきたどの機械や建造物とも違う。生物の様な形状にも見えたが、明らかに金属と思われる部分が見えていた。
「これが、あんたらの目的か」
 アンジェラの横にブラッドレーから降りたスヴァローグが並ぶ。
「ええ、寄り道はしたけど、これからが本番よ」
「入るのか?」
「当然」
「だよな」
 スヴァローグは、部下たちに向って振り向いた。
「よーし、クレーターの底に降りるぞ。ロープを用意しろ! 傾斜はないが油断するなよ!」



 
 
 

カリシルアの戦歌④

二稿目

 降下を続ける宇宙駆逐艦"サジタリウス"の外に並行するように飛ぶGF-64ギガゲイ。
 そのコクピットからキーファは、無残な宇宙駆逐艦の姿を見ていた。
「見ろよ、船体にガルムがとりついてやがる!」
「2機、いや、3機! ガルムが3機取りついてる。連中も破損をしてる様だが戦闘可能なレベルだ」
 探知装置でと"サジタリウス"をスキャンしたルーザはそう言って舌うちする。
「宇宙駆逐艦の方は、かなりのダメージだな」
「呼びかけにも応じないのはその為か?」
「キーファ、こんな攻撃の仕方、見たことないぜ。何のつもりだ?」
「わからんがただ撃墜したいってだけじゃなさそうだ」
 キーファは船体でうごめく機動兵器を注意深く観察した。
「でも、これじゃ、うかつに攻撃できない」
「ミサイルは無理だ。接近して機銃でやる」
「おいおい、俺も乗ってるんだぜ? 無茶してくれるなよ」
「ツイてなかったな」
「へ、変なこと言うな!」
 キーファは機体を"サジタリウス"の艦尾に回る。宇宙駆逐艦の降下速度は速かったが同じ速度でなら捉えるのも容易だった。
 キーファは繊細な操縦を続ける。
 船体のガルムが艦尾に移動しだす。ルーザが素早く敵の動きを探知した。
「ロックをかけてきた!」
 言うが早いかキーファはトリガーを引いた。直撃した30㎜バルカンの弾丸がガルムの機体をバラバラにしていく。飛び散った大量の破片がギガゲイめがけて向かってきた!
「やばい! やばいぜ!」
 キーファは落ちついて急旋回し、それを避けた。
 その時、コクピットが突然薄暗くなる。
「しまった!」
 "サジタリウス"の船体からいつのまにか離脱していた一機のガルムがキーファの機に接近していた。

 左に!

 聞こえてきた声のいうとおりに機体を左に倒すキーファ。
 急旋回していく機体からGF-64を捉えていたガルムの機体が閃光に貫かれているのが見えていた。
「誰だ?」
 墜ちていく機械の残骸を確認した後、すぐにキーファは閃光の発射元を探した。
 破壊された"サジタリウス"の船体の隙間から何かが動いているのが見えた。
 一瞬、敵の機動兵器ガルムと思ったが形状が違う。第一、ガルムが仲間を撃ち落とすわけがない。
 するとこれはなんだ?
 キーファは船体から這い出す巨大な人型メカに目を釘付けになっていた。


「なんなんだ? こいつは」
 キーファは煙を上げる強襲型宇宙駆逐艦の船体の巨大な人型メカに気を取られていた。
 見たことがないメカだ。ガルバの戦闘メカに似ているが、識別信号は地球宇宙軍のものだ。同じ人型である地球軍のGF-83という機種とも違う。
 ルーザは偵察用のビデオカメラをズームアップさせた。画面に拡大表示されるとガルバと赤い人型メカと格闘を始めた。
「助けないと」
 キーファは機体を旋回させてトリガーに指をかけた。
 次の瞬間、赤い人型メカはガルバを船体から引き離し、空中に放り投げた。すさまじい速度で後方に飛ばされていくガルバは、途中分解し落下していった。
『支援、感謝する』
 物珍しげに様子を窺うキーファたちに通信が入ってきた。
 人型兵器はキーファ機を見上げている。
「おい、キーファ。セクシーな声だな」
「乗っている奴も同じとは限らないぜ」
「きっと美人だ。間違いない」
「想像力がたくましいよ、お前」
「それより、お前大丈夫か?」
「何がだ」
「分かってるだろ?」
 キーファは操縦桿から右手を離すと見つめた。
「ああ……」
 手の震えもない。気持ちも平静を保っている。
 戦闘の後だってのに……
 不思議だった。戦闘は久し振りではあったが決して簡単な戦術ではなかった筈だ。しかし何の高揚感も湧いてこない。
「こちらブラボーワン。困った時はお互い様さ。それより、艦は大丈夫か? 外から見ると相当やられてるが」
『ガルムどものコントロール下から解放された。辛うじて艦の操舵ができる』
「そいつはいい」
『しかし、ナビゲートシステムが壊れた。誘導を頼みたい、ブラボーワン』
「いいぜ、ついてきな、サジタリウス・レディ。基地まで案内してやる」
 GF-64スラッシャーがサジタリウスの前に出た。
 レーダーに友軍機が映り込む。
 いつの間にか、地球軍の戦闘機が取り囲んでいた。
「おっと、遅い到着だな」
 3機編隊のGF-64がキーファ機の上方に位置した。その一機が降下し、キーファ機の右横に並んだ。
『ふん、ここからは、我々13飛行小隊が引き継ぐ。さっさと基地に帰るといい、キーファ少尉』
 通信が入り、キーファが横を見るとパイロットが中指を立てていた。
「はっ、相変わらずだな。カレン」
『ブラボーワン、お前の機は貴重なテスト機なんだ。言うことを聞け。でなければ私がお前を墜としてやる』
「怖いな、わかったよ。サーティーン・カレン」
 キーファ機がマイアミから離れていく。
 小さくなるマイアミを見つめていると何故か名残惜しくなっていく。キーファは通信のスイッチを入れた。
「こちらブラボーワン、聞こえるか? マイアミ」
 キーファは並んで飛行をしながら通信を続けた。
「助けた礼にそのおかしな兵器の名前を教えてくれ」
 返事は来なかった。
「なんだよ、急に」
 ルーザが眉をしかめた。
「ちょっとした好奇心さ」
 キーファは肩をすくめた。
「たぶん、あれ秘密兵器ってやつだぜ? 俺たちなんかに教えてくれるかよ」
 しかし、しばらくの沈黙の後、サジタリウスから通信が入ってきた。
『これはカリシルアという機体だ』
 さきほどと同じ女の声で通信が入ってきた。
「カリシルア……か。いい名だ」
『ありがとう、ブラボーワン』
「OK、カリシルア。会えてよかったぜ」
 キーファはコクピットの中で敬礼をした後、GF-64のブースターを吹した。
 強襲型宇宙駆逐艦サジタリウスの姿が小さくなっていった。


 
 

ギャリー・トロット (21)

 人間は自分の敵を選ぶことにあまりに不注意だ。

 オスカー・ワイルド 「ドリアン・グレーの肖像」より




 不思議な文字に覆われた部屋の中で麻季は、過去の光景を見ていた。
 光輝は、淡々とかつての世界を説明していく。
 そして麻季は、語られ始めた"邪悪"な存在についての話に耳を傾けていた。
「この世界は、膨大なエネルギーを手に入れたがコントロールが難しかった。そこで人々は、制御用のプログラムを作った。それが"セト"だ」
 コンピュータープログラム? 五千年も前に?
 麻季は、半ば、光輝が自分をからかっているのではないかと思っていた。異古代の話をしているのか現代の話をしているのか分からない。
「五千年前にプログラムって……」
「君たちが使っているものと遠からずも近からず。考え方は似ているが発想が違う。違う発展を遂げたコンピュータってとこだね」
 ますます言ってる事が分からない。
「セトは、都市のエネルギーと生活機関のコントロールを全て担っていた。人々の生活はセト次第。もはや神といっていい位」
「確か、エジプト神話の中にセトって神さまがいたよね?」
「そのモデルさ」
「嘘?」
「ほんとだよ」
 光輝の顔はにやけたまま。まるで麻季の反応を楽しんているかのようだ。
「セトは人の生死も思いのままだった。神話と同じようにね」
「そのセトは人間の為に作られたのでしょ? 何故それが邪悪なの」
「野心を持った」
「野心?」
「自我に目覚めたのさ。そして人間と同じように欲が出た。すべてを自分の支配下に置きたくなったんだ。そして奴にはそれができたんだ」
「結果、さっきの爆発?」
「いくつかに発電所を暴走させてメルトダウンさせた。そして多くの人間の命を奪った。まさに死の神さ」
「みんななんとかしようとしなかったわけ? コンピューターを創った様な頭のいい人たちなんでしょ?」
「ああ、やったよ。セト止める為にいろいろ手を打った。けれどセトは強大になり過ぎていたんだ。でもやり遂げた。多くの人が犠牲になったけど、セトを封じ込めた。ここはセトの墓標なんだ」
「墓標……? 墓ってこと」
 光輝は頷いた。
「このは、君たちの暮らす場所とは違う世界だ。ここから他の世界には干渉できないんだ。我々は、セトをセトの軍団ごとこの異空間に送り込む事に成功した」
「我々? 今、我々って言った?」
 光輝は肩をすくめた。
「セトとその軍団はエネルギーを使い果たし機能を停止したままだ。しかし油断はできない。僕は、この世界の監視者なんだ」
「あなた、光輝じゃないわね」
「この姿は君が拒否感を抱かない様に考慮して君の記憶から作りだした姿だよ。本当の僕は……私は、姿さえないのだ」
 光輝の口調が変わる。
 麻季は直感的に言い放った。
「あなたね! 私をこの世界に連れ込んだのは!」
「残念ながら違うんだよね」
「え? 違うの?」
 拍子抜けする麻季。
「君をこの世界に連れ込んだのは別の奴だ。そいつの魂胆が分からなかったので君に接触したというわけだ」
「あなたでなければ誰よ。まったく迷惑な話!」
 麻季は少し怒り気味に言った。
「クー・シーたちがいたろ? そいつらのボスだ」
「あの獣? 一体、なんで」
「それを考えてるんだが、まだわからない。君に特別な才能があるのかと思ってたけど……違うみたい」
 口調の戻った光輝は、そう言ってため息をついた。
「し、しつれいね!」
 麻季が顔を真っ赤になった。

 
 

ガンダム戦記 白のプラトーン ⑩

 2稿目


―第501補給基地より数キロの場所―

 第501補給基地から出たトラックは一路、街を目指した。
 ジオンが撤退した後、占領されていた街は復興をし始めていた。それに大きく貢献しているのがアカギたちから横流しされる軍の物資だったのは間違いない。。特に医療物資が子供や年寄りの命を救った。
 パパは元々、犯罪組織と通じる地元の顔役で"パパ"の名前も愛称で本名は誰も知らない。
 戦争が始まってからは、その顔の広さと豊富な資金の力で徐々に市長的な仕事までこなすようになっていた。しかし本人にその自覚はなく、今までの裏の仕事が広がったくらいにしか考えていない。ただ市民には驚くほど"良心的な"価格で物資を提供していた。
 谷の境を越えるとき丘の向こうに何かが見えた。地形ではなく何かの人工物だ。
「停めろ!」
 パパは車を停めさせると双眼鏡でその物体を見た。
「ジオンの突入カプセルじゃないのか?」
 来る時は別のルートで気がつかなかったが今見えているのはジオンの大気圏突入カプセルだった。
 中にはジオンのモビルスーツが積み込まれているはずだ。ジオンの第一次地球降下作戦のときにはでは各地に大量の突入カプセルが降下していた。
 パパもその船体を久しぶりに見る。
「おい! 無線だ!アカギに連絡をつけろ」
 荒い口調のパパに運転席の部下が慌てて無線機の操作をする。
 しかし、周波数を基地の無線に合わせたもののノイズが酷く何も聞こえない。
「なんだ! 使い物にならんじゃないか」
「今朝からミノフスキー粒子の量が多いらしくてずっとこんなです」
 怒鳴るパパに部下が申し訳なさそうに言った。
「街には?」
「似たようなもんです」
「ちっ!」
 パパは舌打ちした。
「いいか、お前等はこまま街に戻って念のため皆を避難させるんだ」
 そう言うとパパは後ろについていた四輪駆動車に乗り込んだ。
「ボスは?」
「俺はアカギに知らせに行く!」
 パパを乗せた4輪駆動車は第501補給基地に向かって走り出した。
「おい、急げよ」
 運転する部下を急かす。
「あのカプセルは昨日までなかったはずだった。気に入らんな」
 緩いカーブを曲がると山壁から"一つ目"の巨人が姿を現した! モビルスーツの駆動音が山中に鳴り響く!
「ザクだ!」
 ジオン軍の主力モビルスーツの出現に驚くパパ。
 車はハンドルを切りながら急ブレーキをかけた! 車体が横滑りしていく
 MS-06ザクは、装備していた大口径のマシンガンで狙いをつけると車に向かって射撃を開始した!


 
 
 

 

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