真夜中の占い館で散歩
オリジナル小説の公開です
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ガンダム戦記 白のプラトーン ④

2.セレナ・パマス

 4稿目

 ギムリ・ハウンズは、墜落したミデア輸送機から何とか這い出した。
 立ち上がって辺りと見回すと機体の破片が散らばっている。原型の残る機体も翼は変形し、エンジン付近からは煙が上がっていた。
 次第に自分の置かれた状況を把握してくると、とたんに絶望感に襲が襲う。
「なんてこった……」
 ギムリは素直にそう思う。
 その時だ。ギムリの視界に近づいてくる連邦軍の車両が数台見えた。
「助かった!」
 車両に向って大げさに手を振るギムリ
「おーい! こっちだ!」
 車両の列は、墜落したミデアにそのまま近づいてきた。機体の少し手前で停まると中から兵士たちが降りてくる。
 ようやくの助けに安堵の笑みを浮かべるギムリだったが兵士たちはギムリを無視して墜落してミデアに入っていく。
「そりゃ他にも生存者はいるかもしれんが、無視することはないだろうが」
 ギムリは、ミデアを見上げる大柄な兵士を見つけると彼に近づいた。
「君! そこの兵隊!」
 大男は面倒くさそうに振り向いた。
「なんです? あんたは?」
 態度は悪いと思ったが今、自分は助けを請う身だ。ギムリは兵士の無作法な態度を我慢した。
「私はギムリ・ハウンズ少佐。現在、情報部の特別任務を遂行中だ。協力してほしい」
「情報部?」
 男は怪訝そうな顔をし見下ろした。ギムリは近づいて改めて気がついたが、かなりの大男だ。
「そ、そうだ。自分は今、捕虜の輸送中だった」
「捕虜? こいつにジオンが乗ってるんですかい!」
 大男は顔つきを変えると無線機を取りだした。
「おい、バンザだ。そのミデアにはジオンも乗ってるぞ! お前ら注意しろよ!」
 大男は無線機に向かって大声で怒鳴った。
 ギムリ少佐は、兵士たちが行き過ぎた行為をしないか心配になった。何しろ自分には、この重要人物を生きたまま連れていくという任務がある。
「まあ、捕虜といってもだ……」
 ギムリ・ハウンズが、バンザに言いかけた時だ。
 突然、黒い大きな影が二人を覆っていた。
 二人が見上げるとRGM-79"ジム"が見下ろしている。
 RGM-79ジムは地球連邦軍が配備した初の量産モビルスーツだった。
 ジオンの主力モビルスーツ MS-06"ザク"よりも性能は落ちると評されるものの、その戦闘力は従来の戦車などの通常地上兵器よりもよほど高い。南米の連邦軍本部"ジャブロー"を大規模攻撃されて以降、驚くべきペースで各地に配備された新兵器である。
「少尉!」
 大男はRGM-79に向かって叫んだ。
「ミデアの中にはジオンが入り込んでいるそうです!」
 RGM-79の頭が足元のバンザに向けられた。
 大男は横にいる情報部の将校を見やった。
「この情報部のお偉いさんが言ってるんですよ! このミデアにジオンの捕虜が乗ってるって!」
 ジムの外部スピーカーから声がした。
『何人だ?』
 その問いかけにギムリ・ハウンズ少佐は派手な身振りで応じた。
「ひとりだ。たったひとり! だが大切な捕虜なんだ! 君の部下に殺させないようにしてくれ」
 ギムリがジムに向かって必死に叫ぶ。
 ジムは腰をかがめた格好をとった。制御するコンピュータのおかげか、その動きは実にスムーズで人間の動きそのものに見えた。
『その入り込んでるジオンってのはこれか?』
 ジムはチタン合金製の゛手゛を下ろした。
 そこに乗っていたのはジオンの制服を着た少女だ。ジムの指に危なげに掴まっている。
「そいつだ!」
 少女を見つけるとギムリが大声を張り上げて指差した。あまりの大声に隣にいた大男は耳を押さえる。
「こいつめ! 逃げ出そうとしたな!」
 キムリはジムの手に這い上がると嫌がる少女を無理やりひきずり下ろした。
「こ、このぉ、逆らうか!」
 ギムリは少女の頬に平手打ちをした!
「大人しく従え!」
 さらに激しく抵抗する少女の態度に腹を立てたギムリは再び手を上げた。
 思わず目をつぶる少女。
 その時だ! ビームガンの閃光が発射音と共に周囲を照らす! 地上にいた三人はRGM-79ジムの突然の行動に驚き、動きを止めた。
「な、なんだ? 敵か?」
 ギムリは周囲を見渡した。しかし周囲に敵の姿はない。
『そこまでだ』
 ジムのスピーカーが響いた。
 ジムのコクピットが開くと簡易リフトに掴まってパイロットが降りてきた。ヘルメットもパイロットスーツも着ていない。それどころか詰襟もきちんとしていない。一般兵のようにも見えたが翼見ると肩の階級章には少尉の印があった。
 パイロットはリフトから飛び降りるとギムリのそばに向かった。
「気にいらねえな。お偉いさん」
 パイロットは、そう言うと少女の前に庇うように立った。
「な、なんだ? 君は!」
「タスケ・アカギ少尉です。少佐」
 アカギは名乗ると簡単に敬礼を済ました。
「少尉。態度がなってないようだが私は君より階級が上の人間だぞ? それに、これは情報部の仕事だ。引っ込んでいてもらおうか!」
「引っ込んでろだって?」
 アカギは顔つきを変えるとギムリを睨みつけた。
「あ、いや、その」
 下士官の反抗的な態度に戸惑うギムリは思わず後ずさりをした。どうやら彼には階級は関係ないようだ。
 とんだ愚連隊だ。
 ギムリは思った。
 さらにモビルスーツから降りてきた少尉は前に出て威圧する。
「あんた、何か勘違いしてないかい? 少佐殿。ここは俺たちの縄張なんだぜ? あったかい司令部の部屋とは違うんだよ」
「き、君は私のする事が気に入らないようだが、これは任務だ」
「情報部の任務ってのは、女を殴ることかい? 」
 アカギは少佐を馬鹿にしたような目で見た。
「き、貴様!」
 少尉の態度にさすがにカッとしたギムリは殴りかかろうとした。
 が、しかし
「どーしました? 少尉」
 タイミング良くミデアの中に入っていた兵士たちがアサルトライフルを担いでぞろぞろと出てきた。
 次々とアカギの背後に集まってくる兵士たちにギムリは身の危険を感じていた。彼らはアカギの部下なのだ。
「おい! あれ、ジオンじゃねーのか!」
 兵士たちはジオンの制服を着た少女を見つけると慌ててアサルトライフルを構えた。
「こいつは違う!」
 アカギのきつい一言に兵士たちは銃口を下げると顔を見合わせた。
「でもジオンの軍服だよなぁ、あれ」
「そうだよな」
 兵士たちは自分達の指揮官の奇妙な言動に戸惑っていた。
「捕まえるのはこっちだ」
 兵士たちはその命令に驚いていた。アカギが指差したのはジオンの人間ではなく連邦軍の制服を着た情報部将校だったからだ。
「えっ? な、なにを言ってる? 少尉」
 指を指された方のギムリ少佐は動揺しながら後ずさりする。
「こいつはさ、連邦の少佐を名乗っているが実はスパイだ。ご苦労なことに俺たちの様子を探りに来たそうだ」
 その言葉で兵士たちの顔つきが変わる。
「お前たち! そんな馬鹿な話を信じるのか! この階級章を見ろ! こら! 私は情報部少佐だぞ」
 そんな言葉も無視してアカギは命令をだした。
「バンザ軍曹!」
「はい少尉!」ギムリの隣にいた大男が大声で返事をする。
「このスパイを連れてけ! 営倉にぶち込んでおくんだ」
「喜んで!」
 バンザはギムリの後ろに回ると腕を鷲づかみした。その強烈な握力にギムリは痛みで顔を歪める。
「いててて! よ、よせ! 私は少佐だぞ!」
「黙ってな。スパイさんよぉ」
 バンザ軍曹は不敵な笑みを浮かべてギムリを引きずって行った。
「こ、こら! よせ! おまえ! 軍法会議ものだぞ!」
 わめくギムリを無視でてバンザは彼を強引に車に押し込んだ。
 その様子を見守っていた少女はよく事態が、よくわからなくなっていた。
 何しろ目の前で連邦軍同士が言い争い、同じ連邦軍士官を逮捕したのだ。
 ジオン軍の制服を着る自分ではなく。
「さてと」
 アカギは腰に手を当てながら少女の方を振り向いた。
「何者だ? おまえ」
 アカギの言葉に少女は戸惑う。
「名前くらいあるだろう? 何て名だ?」
「セレナ……セレナ・パマス」
 少女は戸惑いながらそう答えた。

 
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ガンダム戦記 白のプラトーン ⑤

4稿目


 太陽が真上に来る頃、気温は幾分上がっていた。
 モビルスーツRGM-79が先行して進む後を2台の4輪駆動車それとミデアから運び出した物資を大量に積み込んだトラックが続いていた。目指すのは彼らの本拠である地球連邦中央アジア方面軍第501補給基地だ。
「何する気だ?」
 突き出された注射器の針を見て救出されたミデア輸送機の乗員は言った。
「感染症の予防注射だ。心配するな」
 トラックの荷台に中で乗員たちに簡単な治療を行なっていた衛生兵はぶっきらぼうにそう言う。
「ここらには、たちの悪い菌が多いからな」
 衛生兵はさらにそう付け加える。
 生き残った乗員は7名。
 皆、軽症であったが衛生兵は、全員に感染症の予防だと言って全員に注射を打ってまわった。

 道のない悪路が終わり車道の後が残る道に出た。とはいえRGM-79ジムの作った足跡に入り込むとシャレにならないほど大揺れする。ドライバーは注意してジムの足跡を避けて運転した。
 やがて道の先に大きな施設が見えてくる。
 古代の城砦を改造したその場所は今では連邦軍の補給基地に生まれ変わっていた。頑丈そうな岩盤には石像のようなものが彫られている場所もあったが殆んどは破壊されているか近代的な外装を施していた。
 RGM-79ジムと4輪駆動車が近づくとゲートが開かれた。
 戦線がまだ近くにあった時はこの基地も昼夜も問わずフル稼働していたが戦線が移動した今は暇なものだった。連邦軍の進攻が順調ならば撤収もそう遠くない話だった。
 開かれたゲートを通るジムと車両部隊。後方の一台の中にはミデア輸送機から助け出したセレナ・パマスが乗っていた。
 セレナは車から外の景色をずっと眺めていた。彼女には、この城砦の所々に残る建造物の"古さ"が珍しくてたまらないのだ。コロニーではどんなに古い建造物も50年がいいところだった。しかし目の前にあるものは軽くその10倍以上は昔のものだろう。その荘厳さを感じたセレナは感激していた。
 子供の様に目を輝かせながら外を眺めるジオン軍の人間に隣に座っていた連邦軍兵士は、呆れて肩を竦める。
 ゲートの中には数台のトラックが停まっていた。現地の民間人らしい人間たちが荷物の積み込みをしている。
 セレナが、何気にそれを見つめていると白いモビルスーツがその場所で停止した。しばらくするとコクピットから見覚えのある人間が降りてきた。

 あの人だ。

 それは自分をかばってくれた連邦軍士官だった。
 セレナは、彼を目で追った。すると現地人の現地人が数人彼に近づいき、親しげに手を挙げていた。
「よう、アカギ」
「繁盛してるようだな、パパ」
「ふふん、あんたのおかげさ」
 そう言って男はアカギに札束を渡した。アカギはそれを受け取ると少し離れた場所にいる部下の方を見た。
「ジュノ!」
 アカギがそう呼ぶと小柄な東洋系の兵士が小走りでやってきた。
「お帰りなさい、少尉。大漁ですね。すごいや」
「ああ、こいつを数えとけ」
「はい、お任せを。少尉」
 アカギは小柄な男に札束を渡した後、パパと呼んだ現地人の男の方を見た。
「ところでパパ、例の頼んどいたものは見つかったかい?」
「ああ、いい場所があるにはあるんだが、あんたの希望より少々狭いんだ」
「他に目星は?」
「探してるんだが中々ね」
「希望のスペースより狭くても構わない。そんなのを後、二、三ヶ所見つけといてくれよ」
「急いでいるみたいだな」
「まあな。最近、入ってきた情報だと、ジオンの宇宙要塞"ソロモン"は陥落したって話だ。ジオンに残ってるのはサイド3を後ろに控えた宇宙要塞"ア・バオ・ア・クー"だが連邦軍がそこまでいけば戦争も仕舞だろ。商売もそれまでって事だ」
「むう……おいしい話もそれまでという事か」
 パパは、神妙な顔つきで黒い髭をさする。
「だが戦争継続の間はここは使用されるはずだ。それまでにできるだけ物資を集める。戦争が終わって世界中が再建を開始すればさらに物資は必要になってくるだろうさ。その時、十分捌けるように在庫しとくんだよ」
「今より儲かるかな」
「俺を信じろよ。戦争は終わっても、横流しのルートはなんとか残しておくつもりだ。俺と組んでればもっと稼がせてやる」
 そう言ってアカギはパパの肩を叩いた。パパはニヤリと笑う。
「期待してるぜ、アカギ」
 二人の話が済んだ頃、金を数え終わった小柄な兵士が立ちあがった。
「約束の金額あります! 少尉」
「正直だな。パパ」
 パパは肩をすくめた。
 アカギは札束から幾らか引き抜くとババに渡した。
「これは?」
 アカギはトラックから下ろされる怪我人たちを指差した。
「連中を手当てしてやってほしい。その代金だ」
「重症なのか?」
「いいや。だが連中は"部外者"だ。ここ置いて余計なことは知られたくない」
 パパはにやりとした。
「なるほど」
 そう話でいる時、大柄な浅黒い兵士が傍にやってきた。アカギの腹心であるバンザ軍曹だ。
「やあ、バンザ。元気かい?」
 バンザは先にアカギに敬礼した後、パパに笑いかけた。
「ああ、まあまあさ。あんたは? パパ」
「変わり映えないね。でもそれは良いことさ」
「マンネリがか?」
「仮に今、ツイているとしたら必ず後でその分ツキが落ちる。逆もまた然りだ。いつでも同じってのが一番いいのさ」
「そんなものかね」
 バンザはパパの話を聞いて肩をすくめた。
「で、何んだ? 軍曹」
「失礼しました、中尉。救出した乗員の事です」
「手はず通りしてるな」
「はい、連中はパイロットも含め7名。感染症の予防だとかなんとか理由をつけて全員にモルヒネを打ちました。ラリっていて、今は、ここの事もよくわかっとらんでしょう」
「結構」
 アカギはにやりと笑った。
「俺たちの方で始末するか?」
パパがそう口を挟んだ。
「いや、それはしなくていい。怪我が治ったら俺たちが適当なとこで本隊へ戻す。わかってると思うが余計な事は知らせるな」
「わかってるさ。商売に差し支えるからな。それじゃあ、荷はいただいてくぜ。また頼む」
 パパはアカギと握手を交わすと乗ってきたトラックに戻っていった。
「とぼけた親父だぜ」
 バンザがパパを見送りながらそう言った。
「あれで、この辺の組織を仕切っているんだから驚きだよな」
「まったくです」
 上官の言葉にバンザは同意した。
「さてとお次は……」
 アカギは車に乗っているセレナを見やった。
「どうします? あのジオン兵」
 バンザが髪の毛の無い頭を掻きながらそう言った。
 アカギは、しばらく考えた後、口を開いた。
「とりあえず尋問だ」
 

 
 

ガンダム戦記 白のプラトーン ⑥

 4稿目


 セレナ・パマスはアカギの部屋に連れていかれた。
 小ぎれいに片付けられた部屋だったがどこか殺風景だ。
「座れよ」
 そう言われセレナは古ぼけた木製の椅子に座る。
 椅子に座らせてしばらくするとアカギはコーヒーを入れてきた。
「飲めよ。少し温まるぞ」
 セレナはカップを受け取ると両手で包み込むようにそれを持った。
「ありがとう」
 カップは温かかった。温かさが手から体に広がってくる様だ。
「どこかに怪我は?」
「いいえ、大丈夫だと思う。ただ、すごくドキドキした」
「生きてる証拠さ」
 アカギは自分の分をカップに注いだ。
「さて、ジオンのお嬢さん。質問させてもらうぞ? お前は何者だ?」
「私はセレナ・パマス」
「そいつはもう聞いたし俺が聞きたのは名前じゃない。お前の所属とか、今まで何をしてたか、だよ」
「所属?」
「部隊名とか部署とか……そんなもんだ」
 セレナは何かを思い出すように俯いた後、答えた。
「どこにも所属はしてません。普通に生活していただけです」
「普通? 世界の半分は死んでるんだよ。そんな時に普通に生活するにするって方が"普通"のことじゃないんだぜ。わかるか?」
 アカギの言葉に心細そうな目を向けるセレナ。そんなセレナの視線にアカギは目をそらした。
「わかった。もういいよ」
 アカギはため息をつくと自分の分のコーヒーカップを持った。
「悪いが、しばらくここに軟禁させてもらう。酷い扱いなんていうなよ。"南極条約"には、従っているし、独房や別の個室に置いておくと、お前の"身"が危ないんだからな」
 セレナはにこりと微笑んだ。
「酷いだなんてそんな……だってアカギさんには感謝しています。さっきも助けてくれたし」
 いつの間にか聞き覚えたのかセレナはアカギの名を言うと礼を言った。
「さっきの事か?」
 セレナは頷く。
「まあ、"あんなヤツ"が嫌いだというのもあるが、ヨソ者を押さえる理由が欲しかっただけだよ」
 アカギはコーヒーカップを片手にデスクに寄りかかった。
「俺は、お前が思うほど、"お人良し"じゃない。何しろここは"普通"の連邦とは少し違うからな」
「それでも嬉しいです」
 そう言って笑顔を見せるセレナにアカギは相手がジオンだという事を一瞬忘れそうになっていた。
 セレナの方も相手が連邦軍だという感覚がないのかもしれなかった。
「まあいいさ。そのうちジオン返してやる」
「私、ジオンに帰りたくない」
 セレナは口調を強くして言い切った。
 それに少し驚きながらアカギはセレナを見ると彼女の表情は沈んでいる。
「亡命希望者なのか?」
「亡命じゃないけど……ジオンも……ジオンも連邦も関係ない所に行きたいんです」
 そう言うセレナの表情はどこか思いつめた感じだった。
 何かあるんだろうが……
 そう思ってコーヒーをすすりながらセレナの様子を観察するアカギ。
 彼は迷っていた。
 このセレナ。パマスが゛副業゛に障害になる要因なのかならないのか。
 地元組織への副業とは物資の横流しである。
 その時、ノックが聞こえた。
「誰だ?」
「バンザです。ちょっとお話が」
 太い声が響く。
「入れ」
「失礼します」
 大柄な男が中に入って来た。バンザは椅子に座りリラックスしてコーヒーを飲むセレナを見つけると唖然とした。その様子があまりにも敵軍の捕虜の雰囲気ではなかったからだ。
「用はなんだ? 軍曹」
 唖然とするバンザを急かすアカギ。
「は、はい。ちょっと通信室に来てもらえますか」
「何があった?」
「少し気になる事があるんです」


 
 

ギャリー・トロット⑰



 遺跡の周囲は静寂と闇に包まれていた。
 数分前の怒号と銃声が嘘の様だ。
 だが、まだ油断はできない。スヴァローグは暗視ゴーグルを被ると注意深く様子を窺った。
 その時だ。
 強烈な光が視界に入る。
 光に気がついた隊員たちが再びアサルトライフルを構えた。
「装甲車だ」
 隊員の一人がシルエットに気付き叫んだ。
 それは援軍だった。頑丈な装甲で包まれた車両がライトを照らしながら低い丘から現れた。M2歩兵戦闘車ブラッドレーだった。
 だが、これは米軍所属ではない。民間企業が特別に購入したものだ。大口径の砲弾は使えないが25㎜のチャーンガンを装備している。このM242ブッシュマスターならクー・シーも容易に退けられるだろう。
 遺跡に立てこもっていた隊員たちはそれが見えた時、心強く思った。
 M242ブッシュマスターの銃身が周囲を警戒するように忙しなく動いている。
『ドッグス、聞こえるか?』
 無線機からそう声がした。
 スヴァローグは無線機の通話ボタンを押す。
「こちらカートドッグス。現在、遺跡の中に籠城中だ」
『了解、カードドッグ。今、そちらに接近する』
「今は姿が見えないが、さっきまでクー・シーに取り囲まれていた。気をつけろ」
『了解』
 装甲車は、遺跡に近づいていった。
 安堵するカートドッグスの面々の中で一人だけが、険しい表情だった。
「浮かない顔ね」
 アンジェラ・ノイマン博士がトルートに声をかける。
「ああ、麻季が消えたままだ」
 トルートは不満気な表情でそう言った。
「きっと、どこかに隠れたのよ」
「本当にそう思って言ってるのか?」
 アンジェラは自分の言った言葉を安易過ぎたと思った。
 彼は、あのアジア系の少女の事を本気で心配しているのだ。気休めに言うにしてに説得力はかなり薄い。
 この遺跡はどこか得体が知れない。どこかに自分たちの気がついてない出入り口があるかもしれない。そしてそこから侵入したあの化け物が麻季を連れ去ったのかもしれない。
 アンジェラは再び自分の言った言葉を後悔した。そしていなくなったのが自分ではなかった事を感謝した。
「トルート!」
 スヴァローグ隊長がトルートを呼んだ。何かの相談をする様だ。彼がその場を離れた後、何かが落ちているのに気がついた。
 写真だった。
 アンジェラはそれを拾い上げる。
 そこに写っていたのはトルートと黒髪の少女だった。この数時間の彼からは想像できないほどの笑顔だった。少女の方は目元と鼻先がトルートとよく似ていた。きっと兄妹なのだろう。歳は15か16といったところか。あの消えた少女と似た様な年齢だ。
 アンジェラは顔を上げて隊長と話し込むトルートを見た。
 彼が、麻季を気にするのが少し分かった様な気がした。
 

 
 その頃、麻季は見慣れぬ場所で目が覚めていた。
「ここは?」
 恐らく短い間だろうが意識が跳んでいたらしい。
 少し離れた場所に光輝が立っていた。壁に向かって何かをしてる様だ。
 麻季は光輝に声をかけた。
「光輝くん?」
 呼びかけられた光輝は振り向くとにこりと笑った。
「気がついたんだね」
「私、どうしたの?」
「意識がとんでたね」
「やっぱり!」
「しかたがないさ」
「ねえ、私、ヨダレとかだしてなかった」
「え?」
「だって、ぼけっとした顔をずっと見られてたわけしょ? うわーっ! 恥ずかしい!」
 麻季は顔を両手で覆った。
 光輝は大笑いする。
「大丈夫さ。普通だったよ」
「本当にホント?」
 光輝は笑いながら頷く。
「よかったぁ……」
 ほっと胸を撫で下ろす麻季。
「ねえ、それより他に気にしなくっちゃならない事ってあるんじゃない?」
 そう言った光輝を麻季はじっと見つめた。
「あ!」
 思い出す様に声を上げる麻季。
「ここはどこ!」
 麻季は傍の窓から顔を出した。
「う、嘘……」
 窓の下を見た時、麻季は唖然とした。
 下は真っ暗な暗闇に覆われ、まるで底のない奈落だった。



 
 

ガンダム戦記 白のプラトーン ⑦

3、アタック・ザ・ジオン

四稿目



 墜落したミデアから無事な物資が次々と運び出されていた。
 トラックには、入りきらないほどの荷物で一杯だ。補給基地に配備されていた別のRGM-79ジムも、この"回収作業"に駆り出されていた。
 不時着で変形した機体をモビルスーツのパワーで強引にこじ開けていく。
「おお、すげえな」
 中を覗き込んだ連邦軍兵士は、その大量の物資に歓喜した。
「よーし! やれ」
 ジムは大型のコンテナを器用に持ち上げると輸送機の外に運び出しを始めていく。
「まったくよ! こんな事をする為に俺はモビルスーツ乗りに志願したわけじゃねえってのによ」
 RGM-79ジムのパイロットがそんな独り言をいいながら作業を行なう。不幸だったのは無線が開きっぱなしだったこと。
『文句言うな! こんな状態じゃリフトは使えねーんだ! MSで運び出すしかねェ』
 ジムの足元から怒鳴り声がした。
『それにお前は知らねえかもしれねーがMSってのは元々、採掘用のマシーンなんだよ。だからこれがモビルスーツの本来の姿ってことだ』
「それはザクの原型の話だろうが。こいつはジムだ。連邦の戦闘用MSなんだよ……」
 ジムのパイロットは小声で文句を呟いた。
『何かいったか?』
「な、なんでもねえよ!」
 MSパイロットは渋々作業を続けた。



 淡々と作業を続けるRGM-79ジム。
 その様子を岩場の陰から視線が向けられる。
 ダークグリーンの機体は気付かれないように静かに移動する。18m越える巨人がその存在を完全に消すのは至難の業だったがそのパイロットは見事にやってのけていた。ダークグリーンのモビルスーツは、大口径のモビルスーツ用のマシンガンを構えながら慎重に進む。
 MS-06"ザクⅡ"と呼ばれるこのモビルスーツはジオン公国軍の主力MSだ。
 連邦軍は初戦において、この一つ目の巨人に散々な目に遭わされていた。ジオンの最新技術を投入して作られたこの新兵器は、ほぼ無敵といっていい ほどの活躍を見せていた。スキルアップしていった対モビルスーツの戦術と自軍のモビルスーツ登場で、ようやく連邦軍にも対抗手段は増えた。しかし、それでも"ザク"は連邦軍兵士たちの脅威である事は変りはなかった。
「ザ、ザク?」
 作業をしていた連邦軍兵士が物音に気がつき見上げるとジオンのモビルスーツが岩場から姿を現していた。
 ザクの外部カメラが慌てふためく連邦軍兵士をズームアップさせた。発見されたジオンのパイロットは悔しげに舌打ちすると機体を起こし始めた。核融合炉の出力が上がり、排気口から白いガスが吹き出る。
「ジオン! ジオン軍だ!」
 ザクを見つけた連邦軍兵士の大声に作業中だった他の兵士を一斉に手を止めた!
 次の瞬間、MS-06ザクはミデア輸送機に向かって何かを放り投げた。
 放り投げられた何かが爆発を起こすと空中で閃光と大音響を発生させた!
 ザクの携帯兵器、通称"クラッカー"だ。その場にいた連邦軍兵士はもちろん作業中のジムも視界を一瞬失った。ジムのコクピットのスクリーンにノイズが入り映像が途絶えた!
「嘘だろ?」
 パイロットはジムの抱えていたコンテナを放り出すとビームガンを構えさせた。しかし目の前が見えなければ敵を狙撃もできない。その事実がジムのパイロットに次第にのしかかる。
 そしてそれは不幸な現実となった。
 ザクはその期を逃さず身を乗り出すと120㎜マシンガンを撃ちまくった! 巨大な薬莢が地面に落ちていく。積もっていた雪が薬莢の熱により蒸発して白い湯気を上げていく。続けてザクマシンガンの大型薬莢が地面に落ちていった。
 視界を失ったジムは射撃の的状態だった。マシンガンより撃たれる大口径弾丸がRGM-79の人型の機体を打ち抜いた。何の反撃も出来ないままその場に崩れ落ちるジム。機体が大地に接すると同時に積もった雪が粉の様に舞った。
 反撃の無いのを確認するとザクは射撃を止めた。
「制圧完了!」
 ジオン軍のパイロットが通信を入れる。
 それを合図に背後の岩場からジオン軍のモビルスーツ群が姿を現した。


 
 

ガンダム戦記 白のプラトーン ⑧

 四稿目



 連邦軍第501補給基地では異変の兆候を感じ取り始めていた。
「おかしな通信が飛び交ってるんです」
 通信兵は、そう切り出した。
「おかしな?」
 通信室に連れてこられたアカギは神妙な顔つきの通信兵の言葉に耳を傾けた。
「ええ、信号だったり、意味のわからない言葉だったり、とにかく色々です」
「今もでか?」
「いえ。でも録音してあります」
「聞かせてくれ」
 通信兵は音源を再生させた。
 しばらくそれを聞いていたアカギだったが次第に顔が険しくなっていく。
「暗号だな」
 アカギのその言葉を聞いたバンザも顔つきが変わる。
「暗号? 敵ですか?」
「かもな。数時間前からのミノフの濃さもだが、ミデアを襲ったドップ。どうも気になる」
「ジオンがミノフスキー粒子を散布してるってんですか? けど、このあたりのジオンはとっくに撤退をしたはずでしょ? 残存戦力は宇宙かアフリカに逃げたって聞いてますよ」
 通信兵が不安げな顔でそう言った。
「掃討作戦を展開中の部隊もこの近くをうろついてるって話も入ってきてます。少しキナ臭いですな」
「新しい戦略的移動があったのかもしれん。が、確認しようにも。この濃いミノフスキー粒子のせいで司令部とは連絡はつかない」
「索敵しますか?」
 言うが早いか、バンザが地図を広げた。アカギはバンザのこういうところが気に入っている。
「ああ、適当な連中をみつくろって……そうだな。こことここ。それとこの辺りに様子を見に行かせろ」
 アカギは地図上の数箇所を指差して指示した。
「了解」
「それから、あの情報部だとかいう"クソったれ"だが」
「そのクソったれですが、空き倉庫に放り込んでおきました」
「倉庫には暖房も無いな」
「特別待遇です」
 バンサがそう言ってニヤリと笑う。
「では感想を聞きにいこうか」
「尋問ですか?」
「急激なミノフスキー粒子量の増加とミデアの墜落。単なる偶然かな」
「関連があるって事ですか?」
「ミデアのパイロットの話では二機のドップは威嚇に終始していたそうだ。俺がドップのパイロットだったら獲物を見つけてそんなマヌケなことはしないぞ。あれはパイロットの気まぐれでは、なく何かの作戦を遂行中でそれがまだ継続中としたら?」
「嫌な感じです」
 バンザの表情がさらに険しくなる
「おい、通信を聞き逃すなよ。何か変な言葉が飛び交ったらすぐ知らせろ」
 そういってアカギは通信兵の肩を叩いた。
「りょ、了解です」
 通信兵はヘッドフォンを付けると再び周波数の操作を始めた。
 アカギとバンザは通信室から出た。
「まったく、すっきりしないことが続く。気に入らんな」
 アカギは頭を掻きながらそう呟いた。
「差し出がましいようですが少尉」
「なんだ? バンザ軍曹」
「あのジオンの女」
「ああ、かわいいだろ。セレナっていうんだ」
「はあ? いや、それはそれでいいんですがね。それより大丈夫ですか? 彼女スパイかも」
「ジオンにスパイされてもここには連中が喜ぶ程、大した情報はないぞ」
 アカギは、そう言ってにやりと笑う。
「それよりも連邦にスパイされると困ることがあるはずだろ? この基地の場合」
「まあ、そうですがね」
 肩をすくめるバンザ。
「それに、"あんなスパイ"は、いない」
 そう言い切るアカギにバンザは少し驚いた。
「なぜそう言えるんです? 何か根拠が?」
「根拠? そんなもんはないね。こいつは"勘"ってやつだ」
 その言葉を聞いたバンザは眉をひそめた。
「勘……ですか?」
 バンザはこの上官のことは気に入っていたが、たまに彼の性格が掴み切れない時がある。
 今がその時だった。


 
 

カリシルアの戦歌③

Ⅰ・戦いの惑星 3
(三稿目)

「第7区画にダメージコントロール班をよこしてくれ! 聞こえるか?」
 必死の呼びかけが艦内に響く。
 アルテミス級宇宙駆逐艦"サジタリウス"の艦内はパニックに陥っていた。
 CIC(戦闘指揮室)が機能を失い命令系統は混乱。自動操縦によりかろうじて降下を続けている。しかし、船体に取りついた凶悪な機械が破壊を続けている限り、墜落は時間の問題だろう。
 生き残った戦闘指揮官が防衛用のシステムを操作したが船体に取りつく敵はあまりにも近すぎて狙いがつけれないでいる。
「手動に切り替える」
 砲撃担当士官が小型のレールガンを強引に動かす。本来なら船体破損の危険がある為、ストッパーのかかっている角度だ。しかしこの状況ではそうも言ってられない。レールガンの砲身が船体に取り付いた灰色の機械に向けられた。それに気付いた異星人の戦闘マシーン・ガルムが唸るような音を発する。
「くたばれ! 機械野郎!」
 高熱のプラズマが砲弾をはじき出した! 
 超エネルギー帯びたハイ・タングステン弾がガルムの頭部を吹き飛ばす。一瞬、撃破されたかに思われたマシーンだったが腕のみがレールガンに這っていく。
「嘘だろ」
 生きていたガルムの腕は、目の前のレールガンを叩き潰してしまった。
 マイアミの反撃の手はこれで尽きた。
 艦内に船体のきしむ音が響く。同時に格納庫で爆発が起きる。
 整備兵たちが爆発に巻き込まれた仲間を助け出す。
「おい! しっかりしろ」
 助け出された整備兵は思いのほか重症だった。その時、格納庫に一人のパイロットがやって来た。
「どいて下さい」
 パイロットは倒れた整備兵に近寄ると傷口に手を触れた。
「あんた、どうする気だ?」
 整備兵がパイロットにそう言った時だ。別の整備兵がそれを止める。
「よせ、彼女はヒリア人だ」
 そう言って整備兵たちが仲間を引き離す。
 周りに音楽の様な音が聞こえてきた。爆音の中、そのメロディは、すんなりと耳に入って来る不思議な音だった。
 不思議な事に音が流れると同時に怪我をして整備兵の傷が止血されていく。
「これで動かしても大丈夫。早く衛生兵に」
 そう言うとヒリア人パイロットは手を離した。
「す、すまない。助かった」
 整備兵の礼も聞かないまま格納されている新兵器の方に向った。
「あんた、どうする気だ!」
「このままでは。この艦が墜ちます。その前に"これ"を使います」
 パイロットはそう言って新兵器"カリシルア"に乗り込もうとした。
「そいつは、二人乗りだろ。あんた一人じゃ無理だ」
 確かにそうだった。この新型兵器は、武器管制担当のガンナーと機体操縦のパイロットのペアが必要だった。
 だが、既に操縦パイロットの方は攻撃により死亡していた。今は、ガンナーパイロットしかいない。
「ガンナーシステムを作動させれば砲台替りになります」
「無茶だ! ここから出ることもできないんだぞ」
 しかしパイロットは制止を無視して"それ"に乗り込んだ。
 コクピット内のいくつかのディスプレイが一斉に作動し中を照らした。パイロットは備え付けのヘルメットをかぶるとコードをつなげスイッチを入れた。
「システム作動開始、照準初期化開始、エネルギー接続……コントロールをガンナーに移行……」
 パイロットはまるで呪文を唱えるが如く手順を暗唱していく。ひとつの段階が終わるたびに機体の振動音が大きくなっていった。
「"戦歌"発動」
 その一言で"それ"の機体の駆動部から強烈な光が発せられた。危険を感じた整備兵はその場から逃げ出した。
 狭い格納庫にケーブルで繋ぎ止められていた"それ"がゆっくりと動き出す。
 ケーブルが留め金ごとはじけ飛んだ。
「いくわよ、カリシルア」
 20m近い黒い人型機体が胴体部分を起こしていった。
 パイロットは宇宙軍の戦闘機用とは違う特殊な形状をしたヘルメット越し送られてくる情報を読み取っていた。
 彼女の頭の中に艦に取りついた敵の位置情報が飛び込んでくる。
「直撃させれば被害は最小限に……」
 その時、パイロットの思考にシステムの情報伝達とは違う強烈な何かが入り込んできた。

 誰?

 ガンナーパイロットは、その発するような"何か"を感じ取ろうと、意識を集中させた。




 降下を続ける宇宙駆逐艦"サジタリウス"の外に並行するように飛ぶGF-64ギガゲイ。
 そのコクピットからキーファは、無残な宇宙駆逐艦の姿を見ていた。
「見ろよ、船体にガルムがとりついてやがる!」
「2機……いや、3機! ガルムが3機取りついてる。連中も破損をしてる様だが戦闘可能なレベルだ」
 探知装置でと"サジタリウス"をスキャンしたルーザはそう言って舌うちする。
「宇宙駆逐艦の方は、かなりのダメージだな」
「呼びかけにも応じないのはその為か?」
「キーファ、こんな攻撃の仕方、見たことないぜ。何のつもりだ?」
「わからんがただ撃墜したいってだけじゃなさそうだ」
 キーファは船体でうごめく機動兵器を注意深く観察した。
「でも、これじゃ、うかつに攻撃できない」
「ミサイルは無理だ。接近して機銃でやる」
「おいおい、俺も乗ってるんだぜ? 無茶してくれるなよ」
「ツイてなかったな」
「へ、変なこと言うな!」
 キーファは機体を"サジタリウス"の艦尾に回る。宇宙駆逐艦の降下速度は速かったが同じ速度でなら捉えるのも容易だった。
 キーファは繊細な操縦を続ける。
 船体のガルムが艦尾に移動しだす。ルーザが素早く敵の動きを探知した。
「ロックをかけてきた!」
 言うが早いかキーファはトリガーを引いた。直撃した30㎜バルカンの弾丸がガルムの機体をバラバラにしていく。飛び散った大量の破片がギガゲイめがけて向かってきた!
「やばい! やばいぜ!」
 キーファは落ちついて急旋回し、それを避けた。
 その時、コクピットが突然薄暗くなる。
「しまった!」
 "サジタリウス"の船体からいつのまにか離脱していた一機のガルムがキーファの機に接近していた。

 左に!

 聞こえてきた声のいうとおりに機体を左に倒すキーファ。
 急旋回していく機体からGF-64を捉えていたガルムの機体が閃光に貫かれているのが見えていた。
「誰だ?」
 墜ちていく機械の残骸を確認した後、すぐにキーファは閃光の発射元を探した。
 破壊された"サジタリウス"の船体の隙間から何かが動いているのが見えた。
 一瞬、敵の機動兵器ガルムと思ったが形状が違う。第一、ガルムが仲間を撃ち落とすわけがない。
 するとこれはなんだ?
 キーファは船体から這い出す巨大な人型メカに目を釘付けになっていた。



 
 
 

 

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