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真夜中の占い館で散歩
オリジナル小説の公開です
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人魚姫救出大作戦! ①

 ここは深海。
 太陽の光もここには届かない。
 その闇の中に一点だけ光があった。
 ぼんやりとした光は闇の中、誰かを誘う様に灯っている。
 シレーナは心細くなりながらも灯りを目指して闇の中を泳いだ。
 光に近づくと岩をくりぬいて加工した建物が見える。深海の館だ。
 館の前に来たシレーナは、扉を叩いた。
 薄暗い中にその音だけが響き渡る。そばでは深海魚が音に気付きざわめく。
「お嬢さん、何しにきたんだい?」
 来客に興味を示した深海魚が声をかけてきた。急に声をかけられたシレーナは少し驚いたが、深海魚に向かって軽く会釈した。
「あの……海の魔女に用事があるの」
「海の魔女? ああ、シーハッグの事かい。一体、何の用かね?」
「頼みたい事があるの」
「ああ、あんたも頼むごとね。多いんだよね。シーハッグに頼み事に来る奴。でも、お嬢さん、悪いことは言わないから帰った方がいいよ」
「でも、せっかくここまで来たのに。それに私……」
「ああ、言わないでもいい。魔女に頼みごとなんてロクなことでない事は判ってる」
「そんな事ない。私はただ」
 深海魚はシレーナの言葉を遮った。
「いいかい? お嬢さん。魔女ってのはただで望みは叶えないよ。必ず代価を要求するもんだ。その代価ってのは、きっと、そいつはあんたの大事なモノだろうよ。それでもいいのかい?」
 シレーナは不安げな表情になる。
「なあ、あんたの望むのは、そいつを失っても得る事は価値あるものなのかな? よく考えた方がいい」
 少し考えた後、シレーナは顔を上げた。その表情は何かを決心した様だった。
「はい」
 深海魚は顔を振った。
「警告はしたぞ」
 そう言うと深海魚は尾ひれを貝の呼び鈴を押した。すると、館のドアがゆっくりと開いていく。
 わずかに開いた扉の隙間から声が聞こえてきた。
「誰だ?」
 その声は、しわがれて恐ろしい。シレーナの脳裏にさっきの深海魚の言葉が過る。だが、自分はこの為にここまで潜ってきたのだ。今さら引き返す事などできない。
「わ、私、海の城のシレーナ」
 シレーナは勇気を振り絞って答えた。
「実は海の魔女様に、お願いがあってきました」
 深海は沈黙した。まるでシレーナの言葉に聞き耳を立てている様に。
「お願い。代価が必要なら渡します。だから話を聞いてください」
 しばらくした後、開きかけだった扉は、全開になった。
 その中を覗き込むシレーナ。館の中は深海より薄暗く中にぼんやりと紫の灯りが見える。
 館の中は不気味だったがシレーナは意を決して中に入った。尾びれが扉を通った後、扉が閉じられた。シレーナは、慌てて扉の取っ手を押す。しかしビクともしない。これで何かあっても逃げ道はなくなった。不安になっていくシレーナは、泣きたくなってきた。
 その時だ。
「何が望みだ?」
 紫の灯りの方から声がした。
 振り向くシレーナの目の前に立っていたのは、不気味な黒衣の魔女。
「あなたが海の魔女?」
「ああ、そうさ」
 黒衣の魔女はそう答えた後、ゆっくりと近づいてくる。
「あんたも、あたしに頼みごとかい?」
 シレーナは頷いた。
「タダとはいかないよ。それなりの代価を払ってもらわないとね。楽して望みを叶えるなんて無視が好すぎるからね」
「それならわかってます」
 シレーナは持ってきた小袋の中から真珠や宝石を取り出した。だがシーハッグは、それを少し覗きこんだ後、興味を無くしたようにそっぽをむく。
「そんなもの私には何の魅力もない」
 シーハッグの素っ気ない言葉にシレーナの顔が沈む。
「でも、私の持ってきた価値のあるものはこれだけで……」
「あんたに価値はあっても、あたしには価値がない。そんな物を貰ってもありがたくもなんともないね」
 シレーナは、がっかりして俯いてしまう。
 それを横目で見ていたシーハッグは、見えないようにニヤリとほくそ笑む。
「それにしてもあんたは、きれいな声をしてるね」
 魔女の手がシレーナの頬に近づく。
「それにきれいな顔立ちだ」
 シレーナは反射的に身を引いた。怯えるシレーナに魔女は、笑った。
「そう怖がらなくてもいいじゃないか。あんたは、私の力が必要なんだろ?」
「え、ええ……」
「ああ、本当に素敵な声だね。私はあんたのその声が大いに気に入ったよ。よし! 今回は特別に何でも聞いてやるよ」
「本当に?」
「ああ、あんたの望みは叶えてやるさ。その代わり、私の望みも聞いてもらおうか。そいつが条件だよ」
 しばらく考えた後、シレーナは頷いた。
「よしよし、いい子だね。では望みを言ってみな。人魚のお嬢さん」
 シーハッグは不気味に笑いかけた。



 館の外では深海魚が心配げに窓から中を覗いていた。
「あの人魚のお嬢さん忠告も聞かないで……」
 深海魚はそう言ってため息をつく。
「魔女の代価ってのは決してロクなもんじゃないんだから」



 
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人魚姫救出大作戦! ②

美人魚救出大作戰logo297×270タテ英字ジャケット風背景付き
背景画像「七ツ森」様からお借りしました


 1、お願いは波音と共に



"クラブ・ベーリング 真夜中のオープンイベント! 魔法使いさまは特別にタダ!


 そう書かれたチラシを持って二人の魔法使いが森から海辺の街にやってきた。
「評判の舞踏会なんだって」
 街灯が通りをあるく二人の若い女の影を映した。
 片方は長い空色の髪をしていて柔らかそうな髪を腰まで伸ばしていた。もう片方は黒髪をドレッドヘアにして細かく幾つにも編んでいる。
「海辺の店っていうのはロマンチックなのはいいよ。けど、私もう眠いんだけど」
 黒髪の魔女があくびをしながらそう言った。
「いいじゃん、楽しもうって。せっかく無料チケットもらったんだから」
 そう言って青い髪の魔法使いは、黒髪の魔法使いの手を引っ張った。
「ちょ、ちょっと、キーラ。そんなに急がなくても。それに誰が送ってきたか分からないチケットのイベントなんて怪しいって」
「クリスタルは、心配性ね。きっと新しいお店だから宣伝の為だよ」
 二人が通りを抜けると浜辺が見えた。多くの光が灯る中、と賑やかな音楽と人の声も聞こえてくる。
「おお……」
 その賑やかさにキーラは、もちろん眠ぼけ眼だったクリスタルも感激していた。
「ね。いい感じでしょ?」
「うんうん」
 キーラとクリスタル。二人の魔法使いは、顔を見合すと賑やかな浜辺に降りて行った。
 そこには砂でできた様な、お城風の建物があった。
 近づいていくと、門らしき場所の前に看板らしき札が突き立ててあるのが見えた。


 "クラブ・ベーリング 真夜中のオープンイベント!"
(※これのパーティーは魔法使いさま無料です。 さらにワンドリンクと素敵なプレゼント付き♪)



 看板には、そう書かれいた。
 さらにその下に小さく注意書きもある。


 山賊、海賊関係の方、悪魔関係の方お断り


「よかったね、キーラ」
 ポンと肩を叩くクリスタル。
「え? なんで」
「だってほら、キーラって悪魔によく好かれんじゃん? これなら変なナンパされないでしょ」
「別に悪気はないんだろうけど微妙にムカつくのは何故……」
「さっ、行こう!」
 さっきとは逆にクリスタルがキーラの手を引っ張る。
「ちょ、ちょっとぉ」

 二人がゲートの前まで行くと何かが立ちふさがった。
「なに、あれ?」
 どうやら門番らしいが、強固で甲羅の様な鎧に身を包んだ門番の姿は、まるでカニだった。
「カニみたいな人……ってゆーか、カニ?」
 キーラは、眉をひそめた。
「いや、カニじゃないでしょ。こんなところに。カニみたいな人に見えるのは、カニっぽい甲冑のせいじゃない?」
「きっと語尾にカニって付けるタイプよ、そうだカニ……とか言って」
「それ、どんなタイプなの?」
「絶対、そういうタイプだって。だってカニって言いそうじゃん、どーみても。外見、カニだし」
「いや、だから、どんなタイプなのよ、それ」
 キーラの悪口が聞こえたのか、ジロリと睨む門番。
「き、聞こえたのかしら」
 その時だ! 焦る二人の方へ、門番は巨体を揺らしながら向って来た。
「うそ! こっちへ来るよ?」
 巨体の影が二人を覆い隠す。
 カニみたいな騎士は、キーラたちに大きな顔を近づけた。
「失礼ですが……」
 低い声でカニみたいな騎士は声をかけていきた。
「な、なんですか?」
 キーラは、思わず生唾を飲み込む。
「招待状は、お持ちでエビ?」

「エビかよ!」

 
 
 

人魚姫救出大作戦! ③

 チケットを渡した二人は違う門に通された。
 どうやら魔法使いという事で特別扱いらしい。
 門をくぐると大きな白いドアがあった。白いドアの枠周りには、恐ろしい顔をしたゴブリンが彫り込まれている。
「なんか、気味悪くない?」
「オブジェよ、オブジェ。単なる店の演出よ」
 そう言ってドアを開けようとしたキーラだったが。
「ん?」
 小首をキーラ。
「開かない」
「押すんじゃない?」
 押してみたが、やはりドアは開かない。
「このドア、彫り込んであるだけじゃない?」
 隙間らしく部分に顔を近づけていたクリスタルが言った。
「まさかぁ、それじゃ入れないじゃん」
 その時、背後のドアからカニ騎士が顔を出した。
「言い忘れましたが、その扉は魔法で開く仕掛けになってるエビ」
「はあ?」
「普通の人間が魔法使いと偽ってチケットを持ってる可能性もあるエビ。その対策でエビ」
 そう言うとカニ騎士は、顔を引っ込めた。
 顔を見合わせる二人。
「どうしよう」
「魔法を使えと言われてもねえ」
「爆破する?」
「ちょ、ちょっと、そんなことしたら弁償させられるわよ、きっと」
「大丈夫、大丈夫」
 そう言ってキーラは、呪文を唱え始める。
天を駆ける雷鳴よ。この強固なる壁を貫き、我を通せ……」
 空中に青白い放電がおこり始めた。
「ちょ、ちょっとまったーっ!」
 その時、誰かの声がした。
「誰? 店の人」
 周りには誰もいない。
「ちょっとーお客さん、無茶やめてくださいよーっ。他の魔法使いのお客さんは、もっと平和的な魔法使って開けてるんすから」
 声は上からだ。キーラが見上げるとゴブリンの彫像が迷惑そうな顔で見下ろしていた。
「あ……生きてる」
「もー、雷の魔法なんてかけられたらボク、粉々になっちゃいますって」
「あんた喋れるの?」
「あーやだな。ボクの事、岩を彫っただけの置物と思ってるでしょ? 差別っすよ、差別」
 そう言って、ゴブリンの彫像は口を尖らせた。
「いや、彫像は普通喋らないじゃん」
「そのへんは、自分、最先端な彫像なんでー。一応、ポリシーもってるんでー、そこんとこ見くびらないで欲しいってゆーかぁ」
天を駆ける雷鳴よ。この強固なる壁を貫き……」
「わーっ! お客さん、お客さん! 説明聞いてた? 自分、生きてるんすよーっ!」
「なんか、イラっときたからつい……」
「あっ、やだなー、もしかして嫉妬っすか。僕が最先端なんで羨ましい?」
天を駆ける雷鳴よ……」
「わーっ! 待って待って!」
「開けんのか、開けないのか」
「開けます! 今、開けます!」

 結局、二人は魔法を使わずにドアを開ける事ができた……



 
 

人魚姫救出大作戦!④

 石のゴブリンが護る扉を通り抜けるとそこは大きな部屋だった。
 部屋の奥にはさらに扉が5つある。
「何? なんの嫌がらせ?」
 キーラは顔をしかめる。
「ねえねえ見て見て。扉になにか書いてあるよ」
 クリスタルに言われて覗きこむと確かに何か書き込んである。

 正しい道を通るには運と魔法と神のご加護が必要
 自らの運命を試すか?


「な、なんか意味深ね。ただ踊りにきただけなのに」
「面白そうじゃん。ドッキリパーティーみたいで」
 気が乗ってないクリスタルとは対照的にキーラは乗り気満々だ。
「じゃあ、私はこっち」
 そう言ってキーラは真ん中の扉を選ぶ。
「なら私はここ」
 クリスタルはキーラの左となりを選んだ。
「いや、やっぱこっち」
「私はこのままで」
「いやいや、やっぱこっちにする」
「あんたそんなんだから……」
「何! そんなんだから何!」
「いえ、なんでも」
「そんなんだから彼氏できないって言おうとしてなかったーっ?」 
 必死に首を横に振るクリスタル。でも内心「するどい」と思っていたのも事実だ。
 食い下がるキーラから逃げる様に扉を開けて入った。
「まったくもう」
 キーラも扉を開けて中に入った。
「え?」
 扉の先は水槽になっていた。
「なんで? なんで?」
 首を捻るキーラの肩を誰かが叩いた。
「はい?」
 振り向いたキーラの横にいたのは――

「ボゴボゴゴポゴポグポポポ(ようこそ魔法使い殿。お待ちしておりました)」

 そこにいたのは黒い潜水マスクをつけた者だった。
 まるで"シスの暗黒卿"だ。気のせいかあの音楽が聞こえてくるような気がする。
「きゃああああああ!」
 突然現れた黒マスク男にキーラは思い切り驚く。
「ボゴボゴゴポゴポグポポポ(そんなに驚かなくても。何もしないですよ)」
「こないで、こないでったら!」
「ボゴボゴゴポゴポグポポポ(お願い事があるだけです。そんなに怖がらないでください)
「しっ! しっ!」
「ボゴボゴゴポゴポグポポポ(しっしっ……て犬ですか!)」
「帰る!もう帰る!」
「ボゴボゴゴポゴポグポポポ(いや、待ってください! 私の話しを)」
 慌てたキーラは、電撃魔法の呪文を唱える!
天を駆ける雷鳴よ。この強固なる壁を貫き、話が敵を貫け!
 青白い稲妻が黒マスク男の頭上に落ちた!
「ぎゃあああああ」
 部屋の中に叫び声が響きわたった。
 悲鳴を聞いてエビ…いやカニ騎士が駆け付ける。
「え? 王様?」
 その言葉に目を丸くするキーラ。
「しっかりしてください、王様」
 カニ騎士に抱き起こされた王様は震える手を突き出す。
「ボゴボゴゴポゴポグポポポ(は、早く水の中に……)」
「はい!」
 カニ騎士は王様をそばにある水の中に放り投げた。
 ドボーン!
 マスク男は沈んだまま浮いてこない。
「あんた、王様を助けに来たんじゃないの?」
「これが助けになのでエビ。ああ、ほら」
 そう言ってカニ騎士が水面を指さすと何かが浮かんできた。マスク男ではなく口髭を生やしたおじさんだ。
「大丈夫エビ? 王様」
「おお、なんとか助かったぞ。御苦労であった」
 水の中から顔をだした王様はそう言って親指を立てた。
「あ、意外と普通だ」
 キーラは、王様の顔を指さしてそう言った。
「あたりまえだ! ひどいですぞ!魔法使い殿」
 怒った王様が身を乗り出すと魚の尻尾が見えた。
「え? 魚の尻尾? やっぱ変な人だよーっ!」
 露骨に嫌な顔になるキーラ。
「変? 失敬な! 私は海を統べる者。この辺りの海で王様やってます」
「王様? 海の王様だから人魚海的? しかも王様がなぜクラブの経営なんか?」
「いや、別にクラブをやりたかったわけではないのです。実は、このクラブは優れた魔法使い様を探す為に設けたものなのです。そして目的通り、偉大な魔法使い様をついに見つけた」
 びしっ!とキーラを指差すシスの暗黒卿……いや海の王様。
「私?」

 
 

人魚姫救出大作戦!⑤

「娘を連れ戻したい?」
 王様は水槽の中で頷いた。
「実は、どこぞの若い男に入れ上げて陸に上がってそれっきりで」
 王様は怒ったのか、水槽の中で手に持った三又の槍を叩きつけた。
「お、落ち着いて、王様。ね?」
「はっ! これはお見苦しい所をお見せした。
 打って変って謙虚になる王様は三又の槍を叩きつけるのをやめた。
「それって駆け落ち?」
「いや、娘の一方的らしく。軽くストーカー状態で」
「それはやばいわね。様は変なマスクを被らないと陸では動きまわれないんでしょ? 娘さんもあんな格好でストーカーを?」
「いや、あんな格好でストーカーしてたらすぐ捕まっちゃうでしょ。その辺はウチの娘は常識あるので」
「常識ねぇ」
「実は裏技を使いまして陸の上でも生活できるようにしたのです。そこが問題なんですけど」
「裏技?」
「海の魔女シーハッグの魔法で人間の足をもらったらしいのです。今頃、陸でも生活できる身体になってるはずです」
「海の魔女。聞いたことあるわね。あんまりいい噂じゃないけど」
「そのとおり。そんな奴の魔法を使って娘が陸に上がったなんて、私も気が気じゃありません」
「その後の足取りは?」
「陸の情報はさすがに入りにくく、行方しれず」
「なら、まずは海の魔女に行方を聞いた方がいいわね」
「私もそう思いましたが……」
「どうしたの?」
「いや、ちょっと怖くて」
「あんた王様でしょ!」
「王様でも怖いものは怖いんですよ!」
「手に持った三又の槍は飾りかい!」
「そうです!」
 王様はきっぱり言った。
「さっきは振り回してたのに」
 キーラは頭を押さえる。
「娘さんが出ていくのがなんかわかるわ……」
「そう言わずに助けてください。私には娘が全てなんです」
「そうは言うけどね……」
「タダとは言いません。娘を連れ戻してくださったら海のリゾートへ1カ月ご招待。ホテル代は私どもが持ちます」
「海のリゾート?」
「エステもありますよー」
 キーラの頭の中に優雅に浜辺で寝そべる自分の姿が浮かんでいた。
「し、しかたないわね。これも人助け……いや人魚助け」
「ありがとうございます!」
「じゃあ、まずは海の魔女の所に行きましょうか」
「良い考えと思いますが、私どもは海の中でも呼吸ができますけど、あなた様は陸のお人。一体どうやって?」
「心配ないわ」


 ここはクラブ・ベーリングの外の浜辺
 キーラと王様とお供のカニ騎士がクラブを抜け出し集まっていた。
「魔法使い様、何をするんですエビ?」
 エビ騎士が不思議そうに小首を傾げる。
「いいから、いいから」
 キーラはそう言うと呪文を唱え始めた。
「水の精霊たちよ。汝らの世界に我を導け! アブロスタリア、キブロスタリア」
 目の前の海辺から水柱が上がったかと思うと何か巨大な物が現れた。
「こ、これは」
 目を丸くする王様たち。
「これなら深海くらいへっちゃらでしょ」
 目の前に現れたのは巨大な……巨大な……
潜水艦?」
 王様は首を傾げた。
「そうでーす!」
「あの……これファンタジーなお話ですよね」
「頭が固いわね。そんな人にファンタジーを語る資格はないわ! もっと柔軟に考えなさい!」
「いや、これに乗り込む私たちの方がファンタジーの登場人物失格の気がしますけど」
「つべこべ言わずに出発するわよ!」
 そう言いながら全員潜水艦に乗り込んだ。
「潜航開始!」
「アイサーエビ」
 いつの間にか乗り込んだカニ騎士が操縦席に座り装置を操作していた。
「(これでよかったのだろうか……)」
 潜航を開始する巨大な潜水艦の中でそうひとり思う王様だった。
「(これは楽でいいエビ♪)」
 そう思いながら潜水艦の操縦を楽しむカニ騎士。
「(ふふふ、この夏は南の島でリゾート三昧ね)」
 そんな事を考え、ふと顔がほころぶキーラ。
 様々な思いを胸にキーラたちは海の魔女の元を目指し海底深く沈んでいくのであった。


 
 

人魚姫救出大作戦!(6)

 潜水艦は深海の闇の中を進み続けていた。
「ねえ、まだ着かないのー?」
 退屈になってきたキーラがけだるそうに言う。
「もう少しだエビ。すぐそこの珊瑚を右に曲がれば見えてくるエビ」
 エビ騎士は呑気に言った。
 王様は王様で水槽に浮いたまま昼寝をしてた。
「私も人の事言えた義理じゃないけれども、なんかこの空間、緊張感ないよね……」
 そうこうしてるうちに潜水艦は、目的地に近付いていった。
 薄暗い改訂に城の様な形をした岩がある。幾つかの穴からは僅かに光が漏れていた。
 潜水艦は岩城の前で停止した。
「着きましたよ。魔法使い様に王様」
 居眠りしかけていたキーラはリクライニングシートから跳ね起きた。
「あれが海の魔女の根城ね……うーん、なんか不気味」
「どうしましょう、キーラ様」
 王様は心細そうな声でたずねる。
「とりあえず話し合い。娘さんの行方を聞きだすのよ」
「ではお願いします」
「わかった……いや、それちょっと依存率高くない?」
「私は頼ったら頼り切る主義なので」
「なんて王様。そんなんで国民がついくるわけ?」
「はははは、国民といっても魚介類ばっかですから、脳みそが豆粒くらいな連中ですから統治もなにも……ハッ!」
 横で話を聞いていたエビ騎士が王様を冷ややかな目で見つめている。
「と、とにかく魔法使いの事は魔法使い。お頼みします、キーラ殿!」
「しかたないわね……じゃあ、着替えるからちょっと待ってて」
「着替える? 何に?」
「潜水具よ。水の中じゃ、呼吸できないし」
「魔法使いですよね。魔法でこう、ぱぱっ! と……」
「あのねー魔法がなんでもできる万能のものと思わないでよ。そんな事ができたら彼氏がすぐできるわ……いえ、苦労しないわ」
 王様とエビ騎士は顔を見合わせた。
「わかりました。では、支度、待ってますから」
「悪いわね、じゃあ……」
 キーラは上着を脱いだ。
「悪いわね……じゃあ」
 王様とエビ騎士はその場に居座った。
「悪いわね! じゃああ!」
「あ、お構いなく」
「お構いなくじゃないわよ! 着替えるんだから出てってよ!」
 キーラは二人を潜水艦から叩きだした。


  *  *  *  *


 館の前に放り出された王様は、結局、キーラと一緒に海の魔女の館へ行く事になった。
 潜水具を着たキーラが潜水艦から降りてきた。その姿は分厚い金属の鎧を着こんだ様だ。
「あ、アイアンマンだ」
「違う!」
「もっと、スリムな潜水服ってなかったんですか? あなたヒロインでしょ」
「でも深海だしオモリを仕込んでいないと浮いちゃうんだから仕方ないのよ」
「変なところでリアルなんですね。他はユルい設定なのに」
「そこは突っ込まないで行きましょう」
 3人は扉の前に立った。
「すいませーん」
 館から返事はない。
「すいませーん。海の魔女さーん」
 ノックをしてみたがやはり反応はない。
「留守なんでしょうか?」
「どうかしら」
「キーラさんの魔法でなんとかならないエビ?」
「そうね。ここは私の魔法で……ちょっと離れててね」
 キーラは二人を端に寄せると潜水艦に戻っていった。
「どんな魔法をつかんでしょうカニ……いやエビ」
「キーラ殿のことだ。きっとすごい魔法を使うに違いない」
 しばらくすると潜水艦から声がした。
「二人とも、もうちょっと離れて」
 二人はさらに端に寄った。
「もう少し離れてね。でないと死ぬからね」
 あり得ないキーワードを聞いた二人は慌ててさらに離れた。
「オッケー。じゃあいくわよ」
 潜水艦から魚雷が発射された。
 扉に命中した魚雷は爆発を起こし周辺を吹き飛ばした。
 ものすごい泡と残骸と泥が周囲を覆い隠す。
 その様子を見つめながら王さまは思わずこう言った。

「えっ? 魔法は?」




 
 
 

 

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