真夜中の占い館で散歩
オリジナル小説の公開です
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案山子の庭①

 かつて神と人間がもっと近かった時代。
 二頭の海獣が争っていた。
 長い戦いの末、片方の海獣が破れて死んだ。
 ある時、武具作りの名人が負けた方の海獣の骨を使い槍を作った。
 槍はあらゆる鎧と盾を貫いた。
 そしてあらゆる呪いを打ち破った。
 その名は、ゲイ・ボルグ。




ロンドン
セント・ジェームズ地区キング・ストリートのオークションハウス

「他にございませんか?」
 オークション会場ではその日出された最高値に沸き立っていた。
 小国なら買い取れそうな落札価格に競り合っていた中東の王族も諦めて手を下す。
「では"伝説の槍"はドレイク・クラン様に決まりました」
 木の小槌が叩かれオークションは終了した。
 それは伝説の時代にさかのぼる起源を持つ一品だった。
 オークションスタッフが厳重にその品物を運び出した。
 競り落とし仕事を終えたクランの代理人が携帯電話を取り出す。
「オークションは終了です。品物は手に入れました。はい、すぐ輸送します」
 携帯電話を切ると煙草を咥え一服する。
「あんな物に大金をつぎ込むとは金持ちの考えている事はわからん」
 隣にいた代理人仲間がそう言った。
「クラン氏は本気で思っているのさ」
 煙草の灰が足元に落ちた。
「あれが呪いを解くアイテムなのだとね」

 ゲイボルグ
 案山子の庭




 その日、天気は気持ちの良いくらい晴れていた。
 ガラス張りの天井から光が差し込んでいる。
 長い石畳の中央の廊下を少女が一人歩いていた。
 名はスカーハ。
 髪はショートで、その瞳は透きとおった空の様なブルー。
 廊下の先にある大きな扉を開けるとフードを深くかぶった3人が待ち構えていた。
 少女は3人の前に来ると深く頭を下げながらひざまづく。
 そのうちの一人が手を口を開いた。
「槍のある場所がわかった」
「本当ですか?」
「確実な情報だ。そこで槍の回収を頼みたい、スカーハ」
 中央いたフードを被った人物がそう言った。
「わたしが?」
「姓はライルと名乗るがよい。偽名だがその身分証明書もできておる」
 右端の人物がバッグをスカーハの前に置く。
 スカーハはバッグを取って中身を見ると中には運転免許所と何かの身分証。それと高額紙幣の束が入っていた。
「お前は身分を偽り槍のある場所に潜入するのだ。その方が槍に近づきやすいだろう」
 左端の人物がそう言った。
「よいか、スカーハ。ゲイ・ボルグの入手は我が一族の悲願。必ず槍を手に入れるのだ。そして我らにかけられた忌まわしき呪いを打ち破るのだ!」
「は、はい!」
 3人のテンションに押されながらもスカーハは勢いよく返事をした。
「吉報を待つ」
 そう言い残すとフード姿の三人の姿は消えていった。

 
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案山子の庭②

logoゲイ★ボルグ297-210よこ
背景画像は「ドラゴンズプラネット」さんからお借りしました。



 霧の深い中……

 昼間だというのに薄暗い空には蝙蝠が飛び交っている。
 ライトを照らしながら一台の水色のフィアットが走っていた。
「おっかしいなぁ……ここのはずなんだけどな」
 伝説の槍ゲイ・ボルグを見つける為にスカーハはペンシルバニアに田舎までやってきていた。
 周囲を見渡しながらゆっくりとアクセルを踏むスカーハ。
 上を飛ぶ蝙蝠に気を取られたその時、目の前に何かが飛び出してた!
「おわっ!」
 慌ててブレーキを踏んだ。
 前輪のサスペンションが思い切り沈み込み運転席のスカーハも危うくハンドルに顔をぶつけそうになった。
「ふう……」
 止まった車から降りたスカーハが前を見ると地元の住人らしき老人が腰を抜かしていた。
「だ、だいじょうぶですかぁ?」
「な、なんとかね。この辺りに車が通るなんてめったにないから油断したよ」
 スカーハは老人に駆け寄ると助け起こした。
「死ぬかと思った」
「本当にごめんなさい」
 スカーハは頭を深々と下げた。
「わしも不注意だった。気にすることはないさ」
「そう言ってくれると助かります。でも、おじいさんに怪我がなくてよかったです」
 スカーハはようやく胸をなでおろした。
「ところで、お嬢さん。こんな田舎町に若い子が何の用かね?」
「私、この近くに働きに来たんです」
「そうか、そうか。しかしえらい所にきたもんだな。ここは街に比べると不便じゃぞ」
「私の住んでいた場所も似たような感じでしたから」
「あんたも田舎育ちかね」
「まあ、そんなところです」
「ところであんたは何処へお勤めなさる?」
「クラン様のお屋敷です」
 その名前を聞いた老人は表情が変わる。
「クランの屋敷?」
「はい」
「よした方がいいぞ」
「え?」
「あそこには良くない噂があるでな」
「大丈夫ですよ。そういうのも慣れてます」
「は?」
「い、いえ。なんでも」
「とにかく考え直した方がいいぞ。お嬢さん」
「いえ、これも使命ですから……あ、そうだ」
 スカーハは、ポケットから地図を取り出して広げた。
「どうやら迷ったみたいなんですよ。お城の場所をご存じでしたら教えていただけませんか?」
「むう……しかたがないねえ。この場所がここだからここをこう行って……」
 老人は地図を指差してクラン館を場所を示した。
「そうか、道を一本間違えてたんだ」
「この先を右に行けば後は一本道だよ」
「この道の先ですね。どうもありがとう! おじいさん」
「使命とまで言われちゃあねぇ。うちの孫も見習ってほしいもんだよ」
 スカーハはお辞儀をするとフィアットのドアを開けた。
「なあ、お嬢さん。クランの屋敷に行ったら庭にだけは絶対近づいちゃいかんよ」
「庭……ですか?」
「ああ、絶対だめだ」
「わかりました。いろいろありがとう」
 スカーハは車に乗り込むと再びエンジンを掛けた。タイヤが砂利を撥ねてフィアットは走り出す。
「ああ、行っちまった。何もなければいいが……」
 老人は不安げな表情でフィアットの後ろ姿を見送った。



 10分も走ると丘越しに何かが見えてきた。
「あれね? だけど……」
 暗く薄暗い雲が立ち込めるその下に城があった。不気味でなにかが潜んでいそうな場所にみえる。
 その様子にスカーハは、息を呑んだ。
 それは、これから大変な生活が始まる事を予感させるような情景だった。


 
 

案山子の庭③

 
「あなたが新しいメイドですって?」


 そう言って老夫人がスカーハを品定めする様な目で眺めた。
 屋敷に着いたスカーハがまず会ったのはミセス・ストライカーだった。彼女はハウスキーパー。ハウスキーパーとは使用人たちを取り仕切る役割を負う。権限は主人の次にあるポジションだった。
 ミセス・ストライカーはいかにも厳しそうで典型的なハウスキーパーといった感じだ。 スカーハは緊張な面持ちでストライカーの前にいた。
「はい!! ミセス・ストライカー 」
 スカーハはバッグを探るとライセンスを取り出して読み上げた。
「欧州家事手伝い派遣協会E.H.S(Europe HouseHelpers Servant)所属、会員ナンバー478976……ちがった775541A スカーハ・ライルと申します!」
「少し長いわね」
「欧州家事手伝い派遣協会E.H.S(Europe HouseHelpers Servant)ですか? これでも歴史も古く信頼もある団体なんですよ」
「なるほど、権威あるものほど名称が長くなるものですからね。にしても長い……」
「はい、欧州家事てつ……」
「ミス・スカーハ、それはもういいですから」
「は、はい! ミセス・ストライカー!」
「とにかく、まずは旦那さまに会ってもらいましょう」
「はい!」
「旦那さまは、あそこにいるから挨拶してらっしゃい」
「はい……ってあそこって?」
「あの庭です」
 マダム・ストライカーが庭を指差した。
「庭……ですか?」
 庭は雑草が生えまくり荒れ放題だった。
 もはや雑草というより草むら……いや、森といった感じだが、その中で何か何かが動いてるのが見える。
「あ、いたわ、ご主人様よ。ご主人さまーっ! 今から新しいメイドがそちらに参りまーす」
 満面の笑みで森……いや、庭に向かって手を振るミセス・ストライカー。
「あの、ご主人さま、なんであんなところに?」
「庭いじりはご主人さまのご趣味なのです」
「……の割には随分、荒れているように見えますけど」
「美的感覚は人それぞれ。それより私たちが手を出すと怒りだすくらいですからあなたも気をつけるように」
「なるほど。注意します!」
「では、いってらっしゃい」
「はい?」
「いや、だから旦那さまのところへ行ってらっしゃいな」
「あのぉ……ミセス・ストライカーが私を旦那様に私を紹介していただけるのでは?」
「それは、あなた一人で行きなさい」
「はあ」
「私は危険な場所には行きたくな……いえ、他に用事がありますから旦那さまのところにはあなた一人で挨拶に行ってらっしゃい」
「はい? 今、気になる事、言ってません?」
「い、言ってません! 空耳でしょう。危険なんて言ってません」
「危険? 今、危険って言いましたよね?」
 問い詰めるスカーハにミセス・ストライカーは、目を合わせなかった。
「ああ、そうだ! 私は急ぎの用事があるんだったわ。じゃあ、ミス・スカーハ、気をつけて」
 そう言ってミセス・ストライカーは行ってしまった。
 ひとり取り残されるスカーハは庭を見た。
 そこには何かがいる。

 何かが……

 
 
 

 

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